社説:道議会新庁舎 随所にのぞく特権意識

2020/02/14 05:00 北海道新聞・社説 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/392931?rct=c_editorial

 道議会の新しい庁舎が完成し、きのう道に引き渡された。6月の定例道議会から使用する。

 新庁舎ができても、最大会派の自民党・道民会議の控室に喫煙所を設置するかどうかの結論が出ていない

 公共施設の禁煙化が進み、隣接する道庁本庁舎は6月から敷地内を完全禁煙にする。不特定多数の傍聴者が訪れる道議会も全面禁煙に踏み切るのが筋だ。

 議員が吸いたいから吸うという態度は特権意識にほかならない。

 しかも、新庁舎はICカードを導入し、会派控室が入る階への道民の入場を制限するという。

 防犯対策とはいえ、道議会から道民を遠ざけ、道議の特権意識が助長されることはないか。

 道議会は新庁舎の完成を機に、旧弊を打ち破り、改革に取り組む必要がある。

 全5会派のうち、自民以外は喫煙所設置を求めていない。村田憲俊議長と全会派の会長らが協議を重ねているが、決着点が見えない状況が続いている

 北海道は2018年のがん死亡率が、都道府県別でワースト2位だ。喫煙率が全国一高く、部位別では肺がんが最も多い。

 こうした現状にどう対処するか、道議会の姿勢が問われている。

 たとえ自民会派が翻意しなくても、新庁舎への喫煙所設置の可否は鈴木直道知事が最終判断する。知事から道議会に、もっと強く禁煙化を迫っていい。

 新庁舎は、一般の道民が会派控室や正副議長室を訪れる場合、道議の許可を得て専用エレベーターに乗るためのICカードを受け取る手間が生じる。

 入り口で氏名を書く程度で済む現庁舎に比べて厳しくなる。

 喫煙所設置問題のような道民感覚からかけ離れた対応が続くと、これも有権者の目を避ける方便と疑われよう。

 そもそも道議会は有権者に議員の活動を知ってもらう努力が不足している。関心を引きつけるには、質疑応答を事前にすり合わせる答弁調整を全面的に廃止するなどの改革が欠かせない。

 全国の地方議会で進む情報通信技術(ICT)化も、新庁舎に無線インターネット回線を備えながら、大量の紙の資料をなくすなどの効果が期待されるタブレット端末の導入に後ろ向きだ。

 これでは何のための新庁舎か分からない。新庁舎を議会の活性化に生かす方策を考えなければならない。