国会議員、会館自室で喫煙 健康増進法に違反

2020/8/14 05:00 北海道新聞 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/450280

 受動喫煙対策を強化する改正健康増進法が今年4月に全面施行されたが、国会議員が議員会館の事務所(自室)で喫煙する違法行為が横行している。国会内は、省庁や都道府県庁などの行政機関よりも緩い規制になっているにもかかわらず、そのルールさえ守られていない。立法府の意識の低さが浮き彫りとなっており、専門家は「言語道断でただすべきだ」と指摘する。

 改正法によると、国会やホテルなどは国の基準に基づき、排気や分煙対策を徹底した「喫煙専用室」を屋内に設置できる。国会の一部である議員会館は各階に喫煙スペースが設けられ、以前は議員の判断に委ねられていた議員会館の事務所は法的に禁煙になった。

 しかし、議員が自室で喫煙する例は後を絶たない。複数の関係者によると、大っぴらに灰皿を置けないため空き缶で代用したり、「臭わないから」と加熱式たばこを吸う議員も。分煙にならないため秘書らが受動喫煙の被害を受けている状態で、ある議員秘書は「目の前で堂々と吸われると注意もできない。自室なら大丈夫と思っているのだろうが、大間違いだ」と憤る。

 厚生労働省によると喫煙専用室以外での喫煙は違法行為。保健所の指導や命令の対象で、従わなければ30万円以下の罰金が科される。議員会館は千代田保健所の管轄で、東北大の黒沢一教授(産業医学)は「自室とはいえ巡視をして禁煙を徹底させなければいけない」と厳正な対応を求める。

 2019年に改正健康増進法が一部施行された際には、役所などの行政機関は敷地内禁煙となったが、喫煙する議員らの圧力で国会や地方議会は「議決機関」として区別された。このため原則屋内禁煙だが、屋内に喫煙専用室を設置できる。国会内の喫煙スペースは衆議院議場入り口や議員会館などの約80カ所に上る。

 日本禁煙学会は昨年12月、国会内の禁煙化を求める要望書を衆参両院に送付。同学会の調査では、全国の市・区議会の97・7%、都道府県議会の55%が既に屋内全面禁煙で、作田学理事長は「自分たちに甘い国会のありさまに、多くの国民が怒っている」と訴える。

 5月に利用が始まった道議会新庁舎では、自民会派が控室に喫煙所を設置する構えを見せていたが、世論などの反発を受け、新型コロナウイルスが収束するまで結論を先延ばしした。当面は屋内禁煙となっている。

国会議員、会館自室で喫煙 健康増進法に違反