社説 受動喫煙対策/法案成立優先の厚労省案
北國新聞/2018/1/31 4:05 http://editorial.x-winz.net/ed-86051
厚生労働省が、受動喫煙対策の素案をまとめた。国民全体の健康保持の観点から、対策を盛り込んだ健康増進法改正案を今国会で成立させたい。
最大の焦点である飲食店での喫煙規制は、当初案より緩められる方向である。厚労省は、喫煙を例外的に認める店を30平方メートル以下のスナックやバーに限定する案を昨年3月に発表したが、外食産業界に配慮する自民党が150平方メートル以下とする対案を出し、政府案の練り直しを迫られた。
厚労省がまとめた修正案では、新規開業や経営規模の大きい飲食店は「原則屋内禁煙」とし、一定の面積以下の既存店は例外的に喫煙や分煙を認める。基準となる面積は、150平方メートル以下とする方向で調整を進めているという。法案の成立を第一に考え、厚労省側が妥協した格好である。
喫煙者と資力に乏しい小規模店に配慮しながら、受動喫煙対策の一歩を踏み出すという判断自体は理解できるとしても、受動喫煙の健康被害は明らかで、喫煙者も減少の一途であることを再認識する必要がある。
厚労省研究班の推計では、受動喫煙による肺がんや虚血性心疾患などの死者は年間1万5千人に上る。また、昨年のJT調査では、男女合わせた喫煙人口は1917万人(対前年比110万人減)、喫煙者率は18・2%(対前年比1・1ポイント減)となっている。喫煙者向けの営業は先細りし、従業員の確保も難しくなる可能性があると考えなければなるまい。
厚労省が受動喫煙対策に乗り出したのは、世界中から選手に加え、多くの政府要人、観光客が集まる2020年東京五輪・パラリンピックをにらんでのことである。受動喫煙の防止措置を政府が講じることは世界保健機関(WHO)が主導する国際的な流れであり、主要国の多くは既に受動喫煙防止法を制定している。
先進国の中で日本だけが取り残された形になっており、受動喫煙対策の普及に関するWHOの格付け(4段階)で、日本は「最低レベル」に位置づけられていることを認識しておきたい。