米加州、フレーバーたばこ製品販売禁止法が成立

2020年09月09日  Jetro https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/09/23a3163fd824b38d.html

米国カリフォルニア州で8月28日、小売店および自動販売機でのフレーバーたばこ製品の販売を禁止する州法が成立した。2021年1月1日から施行し、違反すれば250ドルの罰金が課せられる。

販売が禁止となるのは、果物やバニラ、メンソールなど、たばこ以外の匂いや風味をつけたフレーバーたばこ製品(電子たばこを含む)およびフレーバー・エンハンサー(たばこ用カートリッジ)で、ルースリーフのたばこやプレミアム葉巻(注1)、フカ(水たばこ)は対象外となる。また、カリフォルニア州外に本社を置く販売者のオンライン販売には適用されず、フレーバーたばこを所持することは禁止されていない。

今回の州法成立には、米国で近年、フレーバーたばこが未成年の喫煙を後押ししているとして問題視されていることが背景にある。米疾病予防管理センター(CDC)の2018年の調査によると、過去30日間にたばこ製品を使った生徒のうち、高学年の67%、中学年の49%がフレーバーたばこを使ったと回答している。また、CDCのウェブサイトでは、若者に向けて、たばこの害を説明するページを設けている。

サンフランシスコ市では、2018年にフレーバーたばこ販売を禁止済みで、2019年6月にはフレーバー付きを含む電子たばこ販売を一時的に禁止する条例が成立している(2019年7月3日記事参照)。電子たばこ大手のジュール・ラブズ(本社:サンフランシスコ)などが反対キャンペーンを繰り広げ(注2)、同条例の撤回を問う住民投票(Proposition C)にかけられたが、反対(81.81%)多数で敗れた。

(注1)機械で大量生産されたものではなく、手作りであること。また、上巻き葉が完全にたばこ葉から作られており、卸売価格が12ドル以上かつフィルターなどがついていないもの。

(注2)ジュール・ラブズは2019年9月にProposition Cへの支援を中止すると発表したが、予定どおり住民投票の議題として上がった。

CA州、フレーバー付きタバコの販売禁止へ 若年層への影響大

配信    Jetro  https://news.yahoo.co.jp/articles/28e562fae348ba30c4f7f13274e882a255e05fd6

米カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は、同州内でフレーバー付きタバコ製品の小売販売を禁じるカリフォルニア州法(SB 793)に署名した。これにより同法は法律として成立し、20211月から適用される。

州上院のジェリー・ヒル(Jerry Hill)議員(民主党、サンマテオ郡選出)が起草したこの法律は、米国肺協会(American Lung Association)および米国心臓協会(American Heart Association)からの支持を受けていた。

新しく成立したこの法律は、電子シガレットのカートリッジやフレーバー付きシガレットを販売した小売業者に250ドルの罰金を科すと定めている。約1年前の2019917日には、ニューヨーク州のアンドルー・クオモ知事が、同州内でのフレーバー付き電子シガレットの販売を禁止しており、今回のカリフォルニア州の法制定はこれに続く動きとなる。

これらの州法の狙いは、ティーンエイジャーやトゥイーン(812歳の子ども)といった未成年者を、ベイピング(Vaping)の誘惑から遠ざけることにある。加熱式タバコや電子タバコで蒸気を吸うベイピングは現在、米国の中高生のあいだに広まっており、深刻な問題となっている。

若年層がベイピングに手を出すきっかけとなっているのが、綿あめやマンゴー、「メロンツイスト」、トロピカルフルーツといったさまざまなフレーバーだ。未成年者が軽い気持ちで試し、次第にのめり込んで抜け出せなくなるわけだ。

シガレットやベイピング製品に添加されたニコチンの含有量は、従来型の紙巻きタバコと比較して同等、さらには20倍も高いものがある。

ベイピング製品の最大の販売元であるジュール(Juul)は、オンライン販売についても21歳以上の成人に限定する措置をとっているものの、未成年層はフレーバー付きタバコ製品の最大級の市場になっているのが現状だ。さらにオンライン販売は、カリフォルニア州に発送されるものを含めて、今回の新たな州法の規制を受けない。現時点で、電子タバコの利用者の60%を、思春期の少年少女や若年層の成人、ティーンエイジャーという、25歳未満の層が占めている。

「ニコチン供給電子タバコ(ENDS)」と総称される電子タバコやベイピング用機器が、特に未成年者のあいだで人気になっていることは、懸念を招いている。さらなるタバコや違法薬物の使用につながるリスクに加え、これらの電子タバコを使用することで、命に関わる深刻な副作用が起きる危険が考えられるからだ。

20202月の時点で、ENDSが関与しているとされる電子タバコ関連肺傷害(EVALI)の症例は全米で2800件を越え、死亡例も68件にのぼる。

当初は、従来型のタバコを吸うよりも安全な選択肢、あるいは禁煙のツールとして宣伝されていたENDSだが、実際には、さらなる肺障害の合併症を引き起こす例や、使用者を死に至らしめる例が出ている。

新法によって売上に最も大きな打撃を受けるのは──

カリフォルニア州の新法は、ENDSやシガレットを含む、あらゆる種類のフレーバー付きタバコ製品の小売を禁じるものだが、フレーバー付きの高級葉巻タバコや、水キセルタバコについては、禁止の対象外となっている。

おそらく、この新法によって売上に最も大きな打撃を受けるのは、メンソールシガレットだろう。メンソールフレーバーのタバコを吸うのは成人の喫煙者が多く、ティーンやトゥイーンのあいだではそれほど人気がない。「ニューポート(Newport)」や「クール(Kool)」といったブランドが製造しているメンソールシガレットの販売禁止をめぐっては、熱い議論が起きている。

メンソールタバコの販売禁止に反対する人々は、この禁止措置は、有色人種の人たちが製造し、こうした層をターゲットにしている製品の販売を不当に制限するものだと主張している。さらに、1箱あたり12ドル以上高い、フレーバー付きの高級葉巻タバコを買う人たちを優遇しているとも批判している。

2009年には、連邦法の家庭内喫煙防止およびタバコ規制法が成立し、メンソール以外のすべてのフレーバー付きタバコが禁止された。これにより、「メンソールフレーバー」を謳うかなりの数の製品の販売が継続された。これは、メンソールは子どもにとって魅力が少ないフレーバーだと考えられていたことによる例外措置だった。 

フレーバー付きタバコ製品を購入する手段は、オンライン販売を含めて数多く存在するものの、米国で最も人口の多いカリフォルニア州でさらなる販売規制が課せられたことで、こうしたタバコ製品を新たに使用し始め、その後依存状態になる事例を減らす効果があるのではないかと期待されている。

タバコに関連して命を落とす人の数は、米国だけでも年間50万人近くに達する。この状況を踏まえれば、これが「公衆衛生の危機」だとするニューヨーク州のクオモ知事の警告も、的外れとは言えないはずだ。