たばこ表示規制は「正当」 WTO、最終審も豪州勝訴

2020年06月10日18時41分  時事 https://www.jiji.com/jc/article?k=2020061001017&g=soc

 【ロンドン時事】オーストラリアが導入したたばこの箱に健康被害の警告を表示させる規制をめぐる通商紛争で、世界貿易機関(WTO)の最終審に当たる上級委員会は10日までに、規制を正当と認定した。一審の紛争処理小委員会(パネル)に続き、豪州を提訴していた葉タバコ生産国ホンジュラスなどの主張を退けた。これで豪州勝訴が確定した。
 今年4月に東京都受動喫煙防止条例が施行されるなど、世界的にたばこ規制が強化される中、一段とこの動きが加速しそうだ。
 WTO上級委は、豪州の規制を正当と認めた2018年のパネル決定を支持。パネルの認定の一部に誤りがあったとしながらも、「全体の結論を損なうほど重要ではない」と結論付けた。
 豪州は12年、他国に先駆けてたばこの箱にブランドロゴの記載を禁止し、喫煙が招く健康被害の写真などを表示させる規制を実施した。これに対し、ホンジュラスなどは貿易障壁や商標侵害に当たるとして、WTOに提訴。パネル決定後には一部の国が上訴していた。

健康被害を訴える大きな写真が表示されたたばこの箱=2016年12月、オーストラリア・シドニー 健康被害を訴える大きな写真が表示されたたばこの箱=2016年12月、オーストラリア・シドニー

 

WTO上級委、オーストラリアのたばこ包装規制にシロ判定

2020年06月12日  ジェトロ https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/06/cba3dcbeaf7defc6.html

WTO上級委員会は6月9日、オーストラリアのたばこ製品の包装規制に関する紛争(DS435、DS441)に関して、同国の措置がWTO協定違反ではないとする最終報告書を配布した。紛争の原因となったたばこ製品にプレーンパッケージを義務付ける法令は既に英国、フランス、タイ(いずれも2017年)など世界各国で導入されている。

この事案では、オーストラリアが2011年に制定したたばこプレーンパッケージ法(the Tobacco Plain Package Act 2011)とその関連規則(以下、TPP措置)が問題となった。TPP措置はたばこ製品の包装デザインに制約を設け、喫煙者の減少や禁煙の奨励による公衆衛生の改善を目指すもので、包装に使用できる色の種類や警告文の掲載、さらにはブランド名の表示方法などを規定している。オーストラリアはこの規制に関する世界保健機関(WHO)枠組み条約の加盟国であり、TPP措置は同条約上の義務を履行するための施策だ。

TPP措置をめぐって、4カ国(ホンジュラス、ドミニカ共和国、キューバ、インドネシア)は、同措置が必要以上に貿易制限的であり、商標の商業上の使用を不当に妨げているなどとし、2013年9月から相次いでオーストラリアのWTO協定(注)違反を第1審である小委員会(パネル)に申し立てた。しかし、パネルは2018年6月、TPP措置は人の健康保護という正当な目的を達成するもので、必要以上に貿易制限的ではないとし、申し立て国の訴えを退けていた。

ホンジュラスとドミニカ共和国はこのパネル判断を不服として上訴したが、上級委員会は今回、パネル報告書を支持し、オーストラリアのTPP措置の正当性をあらためて認めた。WHOは、この判断が契機となり、プレーンパッケージを義務付ける国が今後さらに増加するとみている。

TPP措置導入をめぐっては、過去に米国フィリップ モリスがオーストラリア・香港投資協定の下で投資仲裁制度を利用し、オーストラリア政府の投資協定違反を主張した。しかし仲裁廷は2015年に当該紛争の管轄権を認めず、同社の訴えを退けている。

WTO上級委員会は2019年12月から実質的に機能を停止しているが(2019年12月12日記事参照)、本事案を担当しながら任期を満了した上級委員による審理が継続され、今回の裁定に至った。

(注)貿易の技術的障害に関する(TBT)協定2条1項や、知的所有権の貿易関連の側面に関する(TRIPS)協定20条など。