2019/01/10 神戸新聞社説 https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201901/0011968520.shtml
兵庫県が受動喫煙防止条例の改正骨子案をまとめた。2月の県議会に提出する。
たばこの煙から子どもと妊婦を守る姿勢を前面に打ち出したのが特徴だ。
20歳未満の人や妊婦がいる場合、家庭や自家用車内での禁煙を義務付ける。たばこが吸える飲食店などに連れて行くのも禁じる。通学路や公園、子どもらが参加する祭りの会場を喫煙禁止場所に加えている。
受動喫煙の影響は大人より子どもの方が深刻だ。乳幼児突然死症候群の発症が4・7倍に跳ね上がるとの推計もある。
大切な子どもや家族の命と健康を守る観点から、自宅などの私的空間であってもたばこを吸わない。そうした意識を県民が広く共有し、徹底する第一歩としなければならない。
骨子案の土台となったのは、有識者らでつくる検討委員会の提言だ。
提言には、子どもらが同乗する自家用車内での喫煙に罰則を設けるかどうか賛否両論が併記された。県は「自主性に委ねるのが妥当」と罰則を見送った。
検討委では「受動喫煙は児童虐待として認識するべき」との意見が出た。注目に値する論点だろう。行政が主導して、大人だけでなく子どもにもたばこの煙の有害性について啓発を進める必要がある。
兵庫は2012年に全国で2番目に受動喫煙防止条例を制定した「先進県」である。
その後、より厳しい条例を定める自治体が出てきた。今回の改正骨子案に見劣りする部分があるのは否めない。
例えば飲食店は、客席面積100平方メートル以下の既存店で喫煙可能とするなど国の最低基準に合わせた。一方、東京都の条例は従業員を雇用する全飲食店を原則禁煙としている。
規制で売り上げの減少を懸念する飲食業界の反発は強い。しかし、禁煙にしても影響は軽微との調査もある。受動喫煙のない社会の実現に向け、店舗の自主的な取り組みを後押しする仕組みも求められる。
世界標準はいまや「屋内全面禁煙」となっている。兵庫県は県民の理解を得ながら、先進地として受動喫煙対策の旗振り役になってもらいたい。