2024年3月14日 6:00 京都新聞 https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1217797
京都の玄関口で多くの人が行き交う、京都駅八条口駅前広場(京都市南区)。一角にある公設喫煙所で受動喫煙の苦情が相次いでいる。市は対策として2カ所あった出入り口のうち一つを封鎖、「駅構内に流れ込む煙を軽減する効果が期待できる」と胸を張るが、専門家は「たばこの煙は上にも横にも拡散し、周りの空気を汚染する。根本的な改善にはならない」と疑問視する。
八条口周辺に5カ所ある公設喫煙所の一つ「京都駅みやこ夢てらす喫煙場所」は、2016年12月の八条口駅前広場のリニューアルに合わせて開設された。20年4月に全面施行された改正健康増進法は「望まない受動喫煙」をなくすために、できるだけ周囲に人がいない場所で喫煙するよう配慮を求めているが、みやこ夢てらす喫煙場所は新幹線や近鉄の京都駅に近い。バスやタクシーに乗り継ぐ人もいて、人通りもかなり多い。
喫煙場所は2メートルほどの高さのパーティションで囲われているものの天井やドアはなく、煙が漏れ出ないために方向転換させるクランクも未設置。一方、広場全体が屋根で覆われており、煙が屋根の下によどむ構造になっている。
平日朝に現場を訪れると、喫煙所から数メートルしか離れていない場所でバス待ちをする小中高校生の列が見られた。高校2年生の女子生徒は「列が長い時はぐるっと回って喫煙所のすぐ近くまで並ぶこともある。臭いも強いので嫌です」と訴える。
市も手をこまねいていたわけではない。22年8月には「漏れる煙を軽減させる効果があると判断」(市くらし安全推進課)し、東西2カ所あった出入り口にのれんを設置した。だが、昨年12月に開かれた市路上喫煙等対策審議会の資料では、市内に19カ所ある公設喫煙所の中でも、みやこ夢てらす喫煙場所への苦情や撤去要望は24件と際立って多かった。
市は、さらなる対策として人の動線により近い東側の出入り口をふさぐ改修工事を昨年12月中旬に実施。担当者は「遮断することで人が出入りする際に漏れる煙を減らすことができる」と説明する。
一方、受動喫煙に詳しい産業医科大の大和浩教授は「大きな屋根の下に開放式の喫煙コーナーを作るのはあり得ない」と手厳しい。望まない受動喫煙を防ぐ観点から「喫煙コーナーを壁で囲っただけでは周囲の受動喫煙は防止できない。非喫煙者の動線から少なくとも25メートルは離すべき」と説明。その上で「作る場所を明らかに間違えており、枝葉の部分だけを対策しても意味がない。改正健康増進法の配慮義務に反している」と強調する。
こうした指摘に対し奥井慶司課長は「煙が漏れ出ているのは認識しており、苦情もいただいている。ただ喫煙所が離れすぎていると利用されず隠れて吸われてしまうケースもあり得る」と釈明、「利用のしやすさなどさまざまな条件を総合的に勘案して、今の場所に設置した。喫煙者と非喫煙者とのバランスを取りながらできる施策を進めたい」と理解を求める。