屋内禁煙
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世界標準 20年五輪へ対策急務

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世界標準 20年五輪へ対策急務

毎日新聞 http://mainichi.jp/sportsspecial/articles/20170106/ddm/007/030/019000c

 

 2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、厚生労働省が16年、公共の場所の屋内を原則、禁煙とする制度案を公表し、議論が起きている。他人のたばこの煙にさらされる受動喫煙の対策が世界最低レベルとされる日本と、取り組みが進んでいる各国の禁煙事情を探った。

◆日本 「最低レベル」の東京

 世界保健機関(WHO)によると、2014年時点で英国やオーストラリアなど49カ国が職場や官公庁、レストラン、バーなど屋内の公共の場所で完全禁煙を実施。違反者には罰則もある。国全体で禁煙ではない米国でも15年時点で50州のうち37州で職場が、38州でレストランが禁煙だ。

 たばこ1箱(25本入り)が平均25豪ドル(約2200円)と世界最高水準のオーストラリアは、20年に40豪ドル(約3500円)に達するまで税率を引き上げ、国を挙げて禁煙に取り組む。

 各国が熱心に対策を取るのは、日本など約170カ国が批准するWHOのたばこ規制枠組み条約が、受動喫煙対策や税率引き上げを求めているからだ。受動喫煙の悪影響が科学的に明確になってきたことも背景にある。

 国立がん研究センターが16年に発表した解析結果によれば、たばこを吸わない日本人の受動喫煙による肺がんのリスクは、受動喫煙をしない人に比べ、約1・3倍であることが判明した。受動喫煙は循環器や呼吸器の病気、乳幼児突然死症候群にも影響することが分かっている。厚労省研究班は受動喫煙により肺がんや脳卒中などで年間、国内で1万5000人以上、世界で60万人が死亡していると推計する。

 WHOは禁煙や分煙の努力義務にとどまり、罰則がない日本の受動喫煙対策を「世界最低レベル」と酷評。日本は先進7カ国の中で最もたばこが安く、個人の経済力が高いため最もたばこを手に入れやすい国とされる。

 国際オリンピック委員会(IOC)とWHOは「たばこのない五輪」を推進しており、最近の五輪開催都市では屋内完全禁煙が徹底されてきた。厚労省が16年10月に議論のたたき台として公表した対策案では原則禁煙で罰則を盛り込んだものの、飲食店などで喫煙室の設置を認めている。喫煙所がなく、分煙だけの飲食店が多い現状に配慮した格好だ。

 この案に対し、日本医師会は完全禁煙の実現を要望する。一方、飲食業の業界団体は「業績が悪化する」「喫煙室設置は費用やスペース面で難しい」との立場だ。厚労省は議論を集約し、今月20日に始まる通常国会で法律案の提出を目指す。【山本太一】

 

◆中国 常連に灰皿、黙認の店も

北京

 北京市は2015年6月1日、公共施設の屋内と職場内での喫煙を全面的に禁止する「喫煙管理条例」を施行した。施行日から3日間は、市当局が監視員1000人以上を公共の場に動員し、集中点検するほどの徹底ぶりをみせた。

 条例ではオフィス、飲食店、娯楽施設などが全面禁煙にされ、レストランでは分煙も許されない。幼稚園や小中高校、子ども病院では室外でも禁煙で、周辺100メートル以内には専売小売許可証が交付されない。北京首都空港では、構内の喫煙場所は撤去され、屋外通路の喫煙コーナーだけでしかたばこを吸えない。当局は「中国史上で最も厳しい」と宣伝したほどだ。

 個人違反者には最高200元(約3340円)、違反を見逃した施設側にも最高1万元(約16万円)の罰金がそれぞれ科せられる。だが、飲食店の場合、個室などで客が喫煙しても、通報する例はあまりないようだ。常連客には灰皿を出す店もある。愛煙家の北京市民は「規制が厳しくなり不自由になったが、それによってたばこをやめるつもりはない」と話す。【北京・西岡省二】

上海

 上海市では2010年に公共施設での喫煙を規制する条例を施行。幼稚園やスーパー、小規模飲食店などを全面禁煙にする一方、150平方メートル以上の飲食店に分煙を求めた。

 15年には201カ所の店などが同条例違反で摘発され、総額38万元(約640万円)の罰金が科された。ただ、小規模飲食店ではなじみ客の求めに応じ喫煙を黙認するケースも少なくない。市周辺部で鍋店を営む劉亜星さんは「酒を飲めば吸いたくなる客が多い。喫煙を嫌う客に通報され、トラブルになることもある」と話す。

 上海市は公共施設の屋内や交通機関内を全面禁煙にする改正条例を3月に施行する。劉さんは「本気で取り締まりが行われるか、それ次第だ」と当局の出方をうかがう。【上海・林哲平】

 

◆インド 路上OKで規制浸透

 インドの首都ニューデリーのたばこ屋。多くの市民が立ち寄り、1本だけ買って火をつけていた。近くの飲食店の客が一服しにくることもある。屋内での喫煙は原則、禁止だからだ。「喫煙者は周囲の人の健康を守らなきゃいけない。禁煙はいいことだよ」。店主のムハンマド・サーヒルさん(27)は言う。

 世界保健機関(WHO)の報告書によると、インドの喫煙者は2015年時点で推計約1億人。1990年代までは飲食店はもちろん、バスや列車の中でも自由に喫煙できた。映画館でたばこを吸う人もいたほどだ。

 だが01年に潮目が変わった。受動喫煙は人権侵害行為だとして、最高裁が国に公共の場所での喫煙を規制するよう求める判決を出したのだ。政府は03年、病院や官公庁、映画館、駅などで喫煙を禁じる法律を制定。08年に飲食店やホテルに屋内完全禁煙を義務づけ、違反した施設の管理者に罰則を科した。30席・30室以上の店やホテルは喫煙室設置が認められたが、密閉性などが厳しく定められている。

 一方、路上での喫煙は禁じられていない。たばこは1本13ルピー(約22円)前後でバラ売りしており、たばこ店の店先でふかす人も多い。ニューデリー南部のバーの店主、ビール・カント・ラナさん(29)は「酔って『店内で吸わせろ』と騒ぐ客もいる。路上でも禁止されていたら、規制はうまくいかなかっただろう」と話す。

 国民の多くは規制を守っており、禁煙エリアで喫煙する人を見かけることはほとんどない。インド保健省の担当職員は「規制当時も大きな反対はなかった。禁煙は国民の利益であり、喫煙者も理解してくれる。日本も規制を進めるべきだ」と指摘した。【ニューデリー金子淳】

 

◆ブラジル 建物所有者らに罰金

 昨年リオデジャネイロ夏季五輪を開催したブラジルでは、屋内の公共の場所で喫煙を禁じる連邦法が2014年12月に施行された。州によっては同様の州法が早くから整備されている。まず大都市圏を抱えるサンパウロ州で09年に規制が始まり隣接するリオデジャネイロ州やパラナ州といった人口過密地域でも同年内に規制された。

 これらの法規制により、喫煙できる場所は個人の住居内か屋外に限定された。例えば集合住宅ではエレベーターホールや駐車場などは公共の場とみなされ、禁煙だ。建物内には喫煙所も存在しない。

 酒が出る店なども例外ではなく、バーやレストランの客がたばこを吸いたい時はその都度、店外に出なければいけない。店の敷地内に屋外のテラス席などがある場合でも、頭上に屋根のひさしや日よけの傘などがかかっていれば、屋外とみなされず禁煙となる。

 現地報道によると、サンパウロ州では規制が始まった09年以降、5年間で2854件の違反事例が摘発された。罰金の対象は喫煙者ではなく、建物の所有者ら施設側だ。罰金額は最低2000レアル(約7万2000円)~最高150万レアル(約5400万円)と違反を重ねるほど高額になる。悪質な違反とみなされれば商業店舗の場合、営業停止処分もある。

 「法規制には飲食店の経営者が反対し、政治家へ陳情もした」。そう語るのはサンパウロ州飲食店組合のレオナルド・ハモス組合長(55)。「だが実際に導入されると客の減少は一時的なものだった。違反の取り締まりが厳しかったため、制度の定着も早かった」

 サンパウロ州などで規制が始まる直前の08年、18%だった国民の喫煙率は15年の調査で10%に減少した。たばこに関するあらゆる広告を禁じる連邦法も屋内禁煙と同時に施行され、たばこ市場は縮小傾向にある。【サンパウロ朴鐘珠】