新国立競技場

全面禁煙、喫煙室設けず JSC方針

毎日新聞 http://mainichi.jp/sportsspecial/articles/20170331/k00/00m/050/205000c

 

 2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場が建物内に分煙のための喫煙専用室を設置せず、全面禁煙とする方針であることが30日、管理運営する日本スポーツ振興センター(JSC)への取材で分かった。受動喫煙対策の厚生労働省案で、プロ野球の球場など興行を目的とする体育施設は例外的に喫煙室を設けることができる。新国立も興行場との位置付けだが、JSCは「時代の流れに逆行する」として設置しない。

 JSCによれば、国賓らが利用するVIP室は特別に喫煙を認める可能性はあるが、設計図や仕様書を作製する実施設計でも観客のためには喫煙室の場所を確保していない。周囲の回廊部分や広場など屋外にも喫煙所は設置しない方針だ。新国立は東京大会後に運営を民間に委ねるコンセッション方式を採用する方向。「全面禁煙」は公募段階の条件とするという。ただし、イベントなどの大会主催者が仮設の喫煙所を屋外に設置することまでは制限しない。

 また、東京都が五輪会場として新設する6施設のうち、屋内施設の有明アリーナ(江東区)は大会後にコンサート会場など興行場として使われる。都は喫煙室について「設置を前提に設計はしていないが、具体的な検討はこれから」としている。

過去大会では建物外に設置

 五輪期間中の会場運営は大会組織委員会が担当する。国際オリンピック委員会(IOC)は1988年以降、会場や選手村の敷地内は屋内を禁煙にして、建物外に喫煙所を設置してきた。屋内に喫煙室の設置を認めない点で、厚労省案より厳しい。組織委は東京五輪も過去の大会と同様の措置をとる方針だ。

 このため、厚労省案では喫煙室の設置が認められている興行場にあたる野球・ソフトボール会場の横浜スタジアム(横浜市)、サッカー会場の埼玉スタジアム(さいたま市)なども、大会期間中は喫煙室があっても封鎖される。組織委の担当者は「過去と比べ東京五輪で対策が後退することはない」と説明する。

 IOCは10年に世界保健機関(WHO)と協定を締結して、「たばこのない五輪」を推進してきた。厚労省によれば、08年以降、日本を除く全ての開催地で罰則を伴う受動喫煙防止対策を講じている。日本は会場敷地内こそIOCの基準で世界標準に達しているが、厚労省健康課は「飲食店など非喫煙者の権利を守る必要がある。その点では日本の対策は世界最低レベル」と指摘した。