政府 受動喫煙ゼロは断念 がん対策基本計画を閣議決定

毎日新聞

 

 政府は24日、今後6年間の国のがん対策の指針となる「第3期がん対策推進基本計画」を閣議決定した受動喫煙対策に関し、「受動喫煙ゼロ」も検討されたが、数値目標の記載は見送った。当初、夏に決定予定だったが、受動喫煙対策で自民党との調整が難航し、大幅に遅れた。

 政府は対策がまとまり次第、追加で閣議決定する方針。自民党側は厳格な対策には否定的で、「ゼロ」目標を事実上、断念した。

 計画期間は2017~22年度。「がんの予防」を強く打ち出し、「がん医療の充実」「がんとの共生」とともに三つの柱からなる。

 計画を検討する厚生労働省の有識者会議は、がん予防対策の目玉として、東京五輪・パラリンピックのある20年までに「飲食店や職場、家庭など全ての場所での受動喫煙をゼロ」とする新目標を盛り込む方針で一致した。

 しかし、先の通常国会で受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案を巡り、政府と自民党の間で意見の隔たりが大きく、まとまらなかった。政府は計画と改正法の整合性を取るため法案取りまとめを待つことにした。

 一方、各都道府県は国の計画を基に地域の実情を踏まえて計画を策定する。閣議決定が遅れれば都道府県の策定作業が遅れかねず、目標については異例の追加決定とすることにした。

 計画ではこのほか、成人の喫煙率(16年18.3%)を22年度までに「12%」とする目標を掲げた。30~40%台にとどまるがん検診の受診率については、五つのがん(胃、大腸、肺、乳房、子宮)すべて目標値を「50%」に引き上げ、精密検査の受診率を90%とする新たな目標を加えた。

 また、患者の少ないがんや治りにくいがんの早期診断・治療法の開発の促進を明記。小児、若年者、高齢者など世代ごとのがん対策のほか、遺伝情報を基に個々の患者に適した治療を提供するゲノム医療の態勢整備も盛り込まれた。

 

<がん基本計画>新計画は「がんの予防」など三つの柱に

毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20171025/k00/00m/040/111000c  

 

 政府は24日、今後6年間の国のがん対策の指針となる「第3期がん対策推進基本計画」を閣議決定した。受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案がまとまらず、計画での受動喫煙に関する目標設定は先送りされ、決定時期も大幅に遅れた。自民党側は厳格な対策には否定的で、焦点だった「受動喫煙ゼロ」は事実上、断念し、後退した内容となった。政府は改正案がまとまり次第、数値目標を追加で閣議決定する方針。3期の計画期間は2017~22年度。

 過去10年間の計画では「がんによる死亡率の20%減少」を目標に掲げてきたが、15・6%減にとどまり達成できなかった。喫煙率の低下やがん検診の受診率向上が計画通りに進んでいないことが要因とされている。

 喫煙はさまざまながんの原因になり、がん対策に、たばこ対策は欠かせない。男性のがんの30%は喫煙が原因とされ、受動喫煙が肺がんのリスクを約1.3倍増やすことが明らかになっている。

 このため計画を検討する有識者会議は、東京五輪・パラリンピックのある20年までに「飲食店や職場、家庭など全ての場所で受動喫煙ゼロ」とする新目標を盛り込む方針で一致した。しかし、先の通常国会で、飲食店規制を巡り、塩崎恭久前厚生労働相と自民党が対立。改正案はまとまらないまま閉会した。加藤勝信厚労相は24日の閣議後会見で「(改正案は)成案を得ていないが、都道府県で計画に沿って取り組んでもらうこともあり、このタイミングで決定した」と釈明した。

 新計画は「がんの予防」「医療の充実」「がんとの共生」を三つの柱とした。また患者の少ないがん、治りにくいがんの早期診断や治療法開発の推進▽がん検診の受診率を50%、精密検査の受診率を90%に高める▽がんゲノム医療の推進--などが明記された。

第3期がん対策推進基本計画の骨子

・がん検診の受診率を50%、精密検査の受診率を90%に高める

・受動喫煙防止の数値目標は先送り

・がんゲノム医療を推進

・若年患者への相談支援態勢の整備

・高齢患者の診療ガイドラインを作成