毎日新聞
2020年東京五輪・パラリンピックに向けて、千葉市が制定する罰則付きの受動喫煙防止条例について、熊谷俊人市長は21日、店舗の面積に関係なく従業員を雇う飲食店内を原則禁煙とする方向で検討していることを明らかにした。飲食店内の原則禁煙は東京都が6月議会に提出した条例案と同様だが、都や国が実施する考えの加熱式たばこの規制については条例案に盛り込まない方針を示した。
熊谷市長は市議会閉会後、報道陣の取材に応じた。
飲食店内の原則禁煙について、市長は「前々から市独自に検討していて結果的に都の条例案と密にするものとなった」と述べたうえで、「東京都は店の数が多すぎるが、千葉市くらいの規模なら実効性のあるものができる。世界に通用する模範となるような条例を作りたい」と語った。
一方、加熱式たばこについては、国や都は専用喫煙室内であれば飲食しながら吸うのを認める考えだが、市長は「科学的に受動喫煙の害を証明できていない。条例の正当性に疑義をもたれる」として、独自の規制からは外す考えを示した。国の規制がかからない100平方メートル以下の店内なら吸えることになる。
また、都が定めた18歳未満の子どもがいる家庭の室内や自動車内でたばこを吸わないよう求める「子どもを受動喫煙から守る条例」(4月施行)に対しては、「理念は間違っていないが、あまりに進みすぎている。まずは受動喫煙防止条例によって市民の理解を深めたい」と話した。
この日は、市議会全会派が市長に独自の条例を制定して実効性のある受動喫煙対策を進めることを求める申し入れ書を提出。小規模飲食店の従業員などを守るべき対策を徹底する▽加熱式たばこも紙巻きたばこと同様の規制をするよう努力する▽路上喫煙対策も推進することなどを要望した。
今国会で成立する見通しの受動喫煙対策を盛り込んだ健康増進法改正案に対し、千葉市議会が21日、さらに対策を強化するよう求める国への意見書を全会一致で可決した。自民、公明両会派の提案で、意見書の取りまとめにかかわった自民市議によると、地方議会の自民会派が国に受動喫煙の対策強化を求めるのは珍しいという。
改正案では、飲食店などに罰則付きで受動喫煙防止を義務づけるが、100平方メートル以下では喫煙可能とする。意見書では、改正案が成立しても「多くの利用者や従業員が引き続き受動喫煙にさらされる」と懸念を示し、2020年東京五輪・パラリンピックを見据えて、「国際的には低い水準の対策にとどまる」と指摘。「より一層強化された対策の実現を強く求める」とした。
改正案を巡っては、30平方メートル以下のバーなどを除き飲食店は原則禁煙とする案を厚生労働省が示したが、飲食・たばこ業界の支援を受ける自民党議員らの反発で後退した。意見書をまとめた自民会派の茂手木直忠市議は取材に、「受動喫煙で年間1万5000人が死んでいる。医師として対策を強化すべきだと思った。業界の圧力に負けずに国民を守る国になってもらわないと困る。千葉市から動きを作っていきたい」と話した。