秋田県:全面禁煙、来月スタート 喫煙所「最後の昼休み」殺到 「ニオイなくなる」歓迎 「時代の流れ」諦めの声
毎日新聞
県は10月1日、本庁舎や出先機関の喫煙スペースを撤去し、敷地内の全面禁煙を実施する。政策として掲げる「健康寿命日本一」の一環で、職員だけでなく、来庁者も対象となる。嫌煙家は「ニオイを気にせずすむ」「受動喫煙の被害を防げる」などと歓迎する一方、愛煙家からは「我慢すると逆にストレス」「時代の流れ。仕方ない」など、戸惑いや諦めの声が上がった。
●知事肝煎り
県は28日、全職員に向け、「敷地内禁煙」と「勤務時間内禁煙」の通知を出した。さらに、出張時も勤務時間は禁煙とする徹底ぶりだ。
この日の昼休憩時間。喫煙所ではモクモクと紫煙が上がっていた。職員らが次々と足を運び、寸刻を惜しんでスパスパ。ある男性職員は「ここでゆっくり吸えるのも最後か」とため息交じりでつぶやいた。
県は2006年4月から秋田市山王の県本庁舎(第2庁舎含む)、各地域振興局などの建物内を全面禁煙としてきた。一方、敷地内(建物外)にある喫煙所では可能。本庁舎では職員用と来庁者用の計2カ所設けていたが、これらは10月1日に撤去される。
背景には、佐竹敬久知事の強い意思がある。佐竹知事自身もかつてはヘビースモーカーだったというが、7月に行われた議会で「県内の喫煙者をゼロにする大きな目標を持っている」と、並々ならぬ決意を示した。
知事肝煎りの案件だが、こっそり喫煙してもしバレたらどうなるのか。人事課の担当者によると、専用のチェック体制はなくペナルティーも考えていないという。だが「回数があまりに多いと認められれば、服務規定に抵触する可能性があり、処分を検討する」と厳しい姿勢を示す。
だが、規制による弊害の懸念が出ている。休憩時間に敷地外での喫煙は問題ないため、担当者は「庁舎に近い秋田市役所やコンビニなどの喫煙スペースに殺到する可能性はある。近隣住民や歩行者の迷惑になる場所で喫煙しないよう通知している」。
また同課は昨年10月、約4200人の職員全員(非常勤を含む)を対象にアンケートを実施。それによると、回答者は2665人で、そのうち喫煙者は512人で19・2%。前回調査(2003年9月)と比べ16・3ポイント減った。減少の背景について「健康意識の高まりなどがあるのでは。今回の実施でさらに下げていきたい」と話している。
●「文化の一つ」
「喫煙のデメリットは理解しているが、文化の一つ。それを行政が規制するのはおかしい」と主張するのは、小松隆明県議(自民)。1日に2箱(40本)吸うほどの愛煙家だ。「張り詰めた空気の中で仕事をして、休憩時間に『ちょっと一服』は落ち着く。リフレッシュして職場に戻ることができる」とメリットを強調する。
またある県職員の男性は「職場で吸えなくなる分、家で吸い過ぎてしまうかもしれない。自分自身の禁煙につながるかはわからない」と吐露した。
県議会も10月1日から全面禁煙がスタートする。議会棟の喫煙スペースは2カ所だが、すべて閉鎖される。また県警も同日から、職員の勤務時間内の禁煙を開始する。各警察署、交番なども対象。これほど全面的な取り組みは全国の警察組織で初の試みという。