受動喫煙防止「フロア分煙は可」に批判の声


毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20190103/k00/00m/040/109000c?inb=fa 

 
 2020年度から始まる公共の場での原則屋内禁煙を巡り、がん患者や医療者らに厚生労働省への批判が広がっている。先月公表された改正健康増進法に基づく政令・省令案で、複数階を持つ店舗なら喫煙可と禁煙の階を分ける「フロア分煙」を認める方針が示されたからだ。「煙は上へ向かうので、上層階を喫煙可にすれば受動喫煙は防げる」という理屈だが、立法時の議論にはなかっただけに「規制の抜け穴だ」との指摘も出ている。

 改正健康増進法による喫煙規制は、今年7月から学校、病院、行政機関など対策の必要性が高い施設で先行実施され、来年4月から全面的に導入される。

 飲食店は密閉された喫煙室を設ければ、そこだけ喫煙可にできるが、煙が外に漏れないよう省令案で「喫煙室に向かう風速を毎秒0.2メートル以上に保つ」との基準を定めた。その一方で、階が複数にまたがる店舗の場合、2階以上のフロアを密閉しなくても丸ごと喫煙室と見なすことを容認した。加熱式たばこの喫煙室なら飲食もできるため、居酒屋やパチンコ店などが2階部分を「加熱式フロア」として喫煙者を呼び込むことも可能になる。

 この案に対し、日本禁煙学会理事長の作田学医師は「喫煙者を禁煙ではなく、加熱式たばこに誘導しようとしている。受動喫煙を規制する法律なのに『どこかで吸えるように』と抜け道を残している」と批判する。

 また、規制の中身がはっきりしない部分もある。適用除外になる「既存飲食店」の定義▽罰則を科す管理者は経営者か店長か▽テラス席はどこまで屋内か――などで、厚労省は今後、一般向けの「Q&A集」を作るとしている。項目は数百に上るとみられ、対策の事務を担う保健所の解釈次第で規制に強弱が生じる可能性もある。

 日本肺がん患者連絡会理事長の長谷川一男さんは「改正法は『紙巻きと加熱式』『既存店と新規店』で扱いが異なるなど、極めて複雑だ。誤った受動喫煙が起きないよう対策を強化し、国会が付帯決議で求めた加熱式たばこの健康影響の調査などを速やかに進めてほしい」と訴える。

 政令・省令案は今月19日までパブリックコメント(意見公募)を実施中で、政府のウェブサイト「e―Gov」などで受け付けている。厚労省の担当者は「健康への悪影響が科学的には明確でない加熱式も規制対象にするなど、対策は進めている。意見は真摯(しんし)に受け止め、必要な対応を取りたい」と話す。

【ことば】改正健康増進法

 昨年7月に成立し、罰則付きの受動喫煙対策が盛り込まれた。学校や病院、行政機関などは敷地内禁煙、飲食店や職場などは原則屋内禁煙とし、事業者に対策を義務付けた。飲食店は資本金5000万円以下で客席面積100平方メートル以下の小規模既存店は喫煙可で、それ以外の店でも煙の漏れない喫煙専用室内の喫煙は認める。加熱式たばこも規制対象。悪質な喫煙者には最大30万円の過料を科す。

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上記パブコメへの意見例(雛形)