山火事鎮火 足利市が禁煙条例制定へ 消防機材充実も

 

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 栃木県足利市西宮町の両崖山で発生した山林火災で、同市は15日、鎮火を発表した。2月21日の出火から23日目だった。消防が火勢を抑え込んだ1日の「鎮圧」からでも15日かかり、水源がない中での消火活動の難しさを示した。記者会見した和泉聡市長は、山林内での禁煙条例の制定や消防資機材の充実など、山林火災への対応を強化する考えを明らかにした。


 同市によると、15日朝、県防災ヘリで上空からの目視と熱源感知を実施。異常がなかったことから、午後の災害対策本部会議で午後3時の鎮火宣言を確認した。鎮圧以降の残火処理では、4日に山中の3カ所で発煙を確認し消火して以降、残火は見つからず、最終的には13日の降雨(降水量33ミリ)が「恵みの雨」になったという。

 会見で和泉市長は、市民の理解と協力、陸上自衛隊や県内外から応援に入った消防隊などへの感謝の意を表明。山林火災対策を、日光連山などからの山域が市街地に迫る同市の防災施策の柱に据える考えを示した。

 また、水槽車や背負い式水のう、熱源感知装置の整備▽ホース連結時に加圧するポンプの軽量化▽ハイキングコースなど山中での禁煙を求める条例制定▽――などを課題として挙げ、ハード・ソフト両面で対策強化を図るという。禁煙条例については年内の成立を目指す。さらに、今回の消火活動の際に設けた林縁部と住宅地の境界「防衛線」に関し、全市域で設定を検討する考えを表明した。

 鎮火を受けて同市は17日朝、両崖山と天狗山をつなぐハイキングコースの入山規制を解除する。立ち入りは遊歩道に限り、延焼部については自粛を求める。

消火活動に感謝

 両崖山の近くに住む革工芸作家の富田秀子さん(84)は「ほっとした」と胸をなで下ろした。毎日午前6時半ごろから、消火活動のために自宅上空を自衛隊などのヘリが飛んでいたといい、「心臓がドキドキしていた」と振り返る。近くには足利織姫神社もあり、燃え移らないようにと日々願ったという。「織姫神社まで火が行くこともなく、住宅への被害もなくて良かった」

 避難勧告が一時出された西宮町の70代女性は「自衛隊や消防による朝から晩までの消火活動には頭が下がる思い」と感謝した。山が燃える様子が自宅から見え、「火が近くに来そうで、本当におっかなかった」と言う。「けが人もなく家屋被害もないということだが、一歩間違うと人命に関わる話。これを機に、火の始末に気をつけるようにしてほしい」と求めた。

通報者「休憩所から煙」

 今回の山林火災発生を通報した一人が、千葉県野田市の会社役員、湯田淳さん(56)だった。湯田さんによると、友人グループとの登山の下見のため、火災発生の約1時間前の2月21日午後2時半ごろ、足利織姫神社から両崖山、天狗山へとつながるハイキングコースを1人で登り始めた。午後3時半ごろ、天狗山の山頂から両崖山方面を眺めたところ、煙と炎が確認できたため119番した。この間の経緯は県警にも既に説明したという。

 湯田さんによると、コースは広葉樹が多く、乾燥した落ち葉が斜面にも積もっていた。両崖山に向かう途中の休憩所で、たばこを吸う年配の男性の姿も見かけた。「火種が落ちたらひとたまりもない」と心配になったという。

 ただ、湯田さんによると、下山後に地図で確認したところ、煙が上っていたのは両崖山から天狗山に向かう途中で分岐する紫山の見晴らし台の休憩所付近だったという。足利市によると、この休憩所は両崖山の山頂から南西約200メートル。木製ベンチなどが設置され、この周辺の燃え方が一番激しかったという。休憩所は行き止まりになっていて、ハイキング愛好者があまり訪れない「穴場」とされる。

 湯田さんは「通報するだけでなく、『自分が引き返せば山火事が大きくなる前に消せたかもしれない』という気持ちが強かった」と振り返った。