2017/7/21(金) 15:38配信 MBS https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170721-10000001-mbsnews-l27
たばこを吸っている人の煙を周りで吸うことを「受動喫煙」といいますが、「3次喫煙」という言葉をご存知でしょうか?「3次喫煙」とは煙を吸うのではなく、衣類や部屋についたたばこの有害物質を体内に取り込んでしまうことで、いまこの3次喫煙の危険性に警鐘を鳴らす専門家もいます。子どもにも影響の及ぼしかねない3次喫煙とはどういったものなのでしょうか。
「いまだ多くの国民が深刻な受動喫煙の被害にあっている。世界に恥じない受動喫煙対策の法案をできるだけ早期に提出すべく引き続き全力で取り組む」(塩崎恭久厚生労働大臣・6月20日)
6月、閣議後の会見で禁煙社会の実現の必要性について談話を発表した塩崎厚生労働大臣。というのも…。今年5月、受動喫煙について話し合う自民党の厚生労働部会で、がん患者である三原じゅん子参議院議員が「望まない受動喫煙もある。がん患者は仕事を選べない」と発言したのに対し、大西英男衆議院議員は「がん患者は働かなければいい」と野次を飛ばしたのです。受動喫煙の問題を話しあう会議で出たこの発言に、各方面から批判の声があがりました。
去年10月、厚労省が公表した受動喫煙対策の強化案は、飲食店を原則屋内禁煙などとするものでした。しかし、自民党内では小さな店は表記すれば喫煙可能とすべきなどと意見が分かれ調整が難航。結局、法案の提出すらされませんでした。
「延期になったことは非常に残念。本当に残念」(肺がん患者の会ワンステップ!代表 長谷川一男さん)
肺がん患者の会「ワンステップ」の代表を務める長谷川一男さん。7年前、39歳のとき、進行した状態で肺がんが見つかりました。長谷川さんはたばこを一切吸いません。
たばこの煙に含まれる化学物質の中にはホルムアルデヒドなど60種類以上の発がん性物質が含まれていて、特に肺がんは喫煙者に多いと思われがちです。しかし、たばこを吸わない人ががんを発症するケースも少なくなく、「受動喫煙」も原因のひとつと考えられています。
「受動喫煙は思いやりでやめるのではなく、他人を傷つけるからやめるのです」(YouTubeより)
長谷川さんら肺がん患者の会では、多くの人に受動喫煙防止を知ってもらおうと動画を作って公開しています。
「喫煙していて肺がんになった人も声をあげている。これほど苦しい思いをしていて、もしかしたら他人にも(受動喫煙の)被害を受けさせてしまったと後悔している人たちがいて、その人たちが本当にやめてほしいと言っている」(長谷川一男さん)
たばこの煙が周りに与える影響はどれほどのものなのか、実験映像で受動喫煙の危険性を訴える専門家もいます。かつてヘビースモーカーだったという産業医科大学の大和浩教授。
「肺の中に残っている煙がずっと出てくる。これも受動喫煙」(産業医科大学産業生態科学研究所 大和浩教授)
大和教授の研究グループが撮影した実験映像を見せてもらうと…たばこを吸い終わった人にレーザー光線を当ててみると、肺の中に残ったたばこの煙がずっと吐き出されていることがよくわかります。
「今出ていた煙は(たばこを)吸っていたときの煙。息を止めています。息を再開します。肺の中に溜まっている煙が出てくる。大体2分から3分間は肺の中の煙が出続けている」(大和浩教授)
また喫煙室から人が出てくるときの様子では…中の煙も一緒にゆらゆらと出てくるのがわかります。喫煙室など別の部屋でたばこを吸っていても煙は漏れているといいます。
これらの煙をたばこを吸わない人が吸い込んでしまうのが受動喫煙です。
そして、意外に知られていないのが…「3次喫煙」という言葉。
「たばこを吸っている人の車に乗るとたばこ臭い。その場で吸っていないけどエアコンとかファブリック(家具類)に染みついている臭いがたばこ臭い、あれが3次喫煙」(大和浩教授)
つまり「3次喫煙」とはたばこの煙に含まれる有害物質が室内の壁や家具、服などに付着し、たばこを吸わない人の身体に入ること。例えば喫煙者が利用した後のカラオケルームや、禁煙ルームがなく消臭対応のみ行ったホテルの客室なども「3次喫煙」のリスクがあるといいます。
東京都が行った研究では、たばこの煙を一定時間吸着させた布から発がん性物質が検出されたことが報告されています。
大和教授は3次喫煙には特に小さな子どもに注意が必要だと指摘します。
「たばこを吸うお父さんがベランダで吸って戻ってきて、赤ちゃん抱きあげる。そうすると口の粘膜と気管支には大量のタールが付着しているので、話しかけると息が3次喫煙になる」(大和浩教授)
たばこを吸った後に小さな子どもを抱っこするだけで3次喫煙にさらされるといいます。さらには、たばこの煙がソファやテーブルに付着し、それを赤ちゃんが触って手を口に入れることでも3次喫煙につながるといいます。
今年2月には、イギリスの科学雑誌で生後すぐ3次喫煙の環境で飼育されたマウスと普通のマウスでは体重に差が出たという研究結果が発表され、成長に影響を及ぼす恐れがあると指摘しています。
2020年の東京オリンピックまでに受動喫煙対策を強化したい東京都や厚生労働省。WHO=世界保健機関は日本の受動喫煙対策が「最低レベル」と分類していて、受動喫煙対策は待ったなしのところまできています。