受動喫煙対策を強化するための健康増進法改正案は、厚生労働省と与党・自民党との調整が難航し今国会への提出が厳しい情勢となっている。本人がたばこを吸わなくても吸う人が近くにいるだけで煙を体内に取り込んでしまう受動喫煙は、健康に悪影響を与える。住民の健康問題に関わるだけに対策強化は早急に行われるべきだ。国会は18日に会期末を迎えるが、延長されれば法案提出が間に合う可能性もある。土壇場での双方の歩み寄りに期待したい。
国立がん研究センターの研究によると、受動喫煙の罹患[りかん]リスクは肺がんと脳卒中がともに1・3倍。乳幼児突然死症候群は4・7倍になる。現行の健康増進法は努力義務しか定めていない。しかし、世界保健機関(WHO)は日本の取り組みを「世界最低レベル」と分類する。さらにWHOと国際オリンピック委員会(IOC)は「たばこのない五輪」の推進で合意しており、これまで開催した中国、英国、ブラジルなどは罰則付きの法規制を導入した。東京五輪・パラリンピックを3年後に控えることもあり、厚労省は対策強化を目指している。
厚労省は飲食店、学校、病院、ホテルを原則禁煙とし、違反の喫煙者は30万円以下の過料とする案を3月に公表した。飲食店には例外を設け、大人数が入れない広さの30平方メートル以下のバーやスナックなどは喫煙を認めるとした。一方、自民党は一定面積以下の店舗への「喫煙」「分煙」の表示、未成年者の立ち入り禁止など複数の条件を満たせば、喫煙を認める案を示している。双方は協議を重ね、厚労省が例外を拡大する譲歩案も示したが、残念ながら溝は埋まらなかった。
厚労省が3年に1度、実施している国民生活基礎調査によると、平成25年の成人喫煙率(男女合計)は本県が25・1%で全国を3・5ポイント上回った。本県は16、19、22年の調査でも全国より高く、愛煙家が多いことを裏付けた。
たばこは税負担率が6割を超え、愛煙家は国や地方自治体の税収に貢献している。個人が自己の責任においてたばこを吸う権利も認められるべきだろう。しかし、たばこを吸わない多くの人は、煙や臭いを快く思わない。愛煙家には耳の痛い話だろうが、マナーを守らない人が時折見られる。分煙の措置が不十分で禁煙席に煙が流れてくる飲食店もまれにある。可能な限り適切な対応をお願いしたい。何よりもまず、受動喫煙防止を徹底するため早期の法改正実現を望む。