豪州の保健省は2日、喫煙と電子タバコの規制を強化するため、今後4年間でたばこ税を大幅に上げる計画で、次世代がニコチン依存症になるのを防ぐため、将来的に電子タバコを禁止すると発表した。
それによると、たばこ税は9月から年5%ずつ引き上げ、4年間で合計33億豪ドル(約2960億円)増税する。これは、電子タバコの輸入と包装に関する新たな規制などによる2億3400万豪ドル(約210億円)の増税に続く措置だ。
英BBCによると、電子たばこは通常のたばこに比べ安全であると考えられ、英政府の場合は禁煙支援プログラムの一環として、紙巻たばこの喫煙者に電子たばこを無料で配布している。当初は紙巻きたばこの代替品として禁煙治療の一環だったが、電子たばこは今や若者や子どもが依存して習慣化するケースが、世界各地で社会問題になっている。
また、専門家は電子たばこに健康リスクが無いわけではなく、多くの場合、有害な化学物質が含まれている可能性があり、電子たばこを使用した場合の長期的な影響はまだ明らかではないとしている。
豪州のバトラー保健相は、「電子たばこには、もともと肺に属さない200以上もの化学物質が含まれている。除草剤やそれに含まれているものと同じ化学物質もある」と説明した。
豪政府は州や準州と協力し、小売店やコンビニでの電子タバコの販売停止を目指す。同国でこれまで、ニコチン入りの電子たばこを合法的に売るルートは、医師の処方に限定されていたはずだったが、実際には各地で広く販売されている。
闇市場の拡大に対処するため、新たな規制では、処方せんなしで買える電子たばこの輸入が禁止されるほか、電子たばこの使用が禁煙補助用に限定されるよう、医薬品らしいパッケージを義務付ける。若年層に人気のあるカラフルなフレーバー付きのパックは制限され、使い捨ての製品は禁止される。バトラー氏は、「今後はバブルガム風味やピンクのユニコーン、ペンケースに隠せるようなマーカー風のデザインはなくなる」と強調した。
同氏は、「これらの製品はわれわれの子供たちをターゲットにしている」とし、「電子たばこは今や高校で最も懸念する非行問題になっており、小学校でも広まりつつある。これは終わらせなければならない」とし、深刻化する若年層の電子たばこ使用への懸念と対策の必要性を説いた。
バトラー氏はまた、これまで喫煙の減少に向けた豪政府の取り組みにより得た公衆衛生の向上が、電子たばこという〝新たな脅威〟によって帳消しになる可能性があるとし、危機感を示した。
オーストラリア医師会のスティーブ・ロブソン会長は、「オーストラリアで新しい若い世代が電子たばこに夢中になっていることを理解している」と前置きし、「これは素晴らしい政策だ」と政府の取り組みを支持した。
豪アルコール・医薬品財団のエリン・レイラー最高経営責任者(CEO)は、同国で電子たばこを吸っているほとんどは、規制対象外の製品を使用しており、どのような物質が含まれているか全く不明だと発言。「若い人を含め、電子タバコを吸う人の中には、知らず知らずのうちにニコチンを摂取し、依存症を形成している可能性がある」と指摘した。
政府は今回の公衆衛生改善策に6300万豪ドル(約57億円)を計上。うち、約半分の3000万豪ドル(約27億円)は、電子たばこ常習者の禁煙を支援するプログラムや、喫煙とニコチンの有害性に関する医療関係者への教育強化に充てられる。それとは別に、1億4000万豪ドル(約126億円)を先住民族の紙巻たばこの禁煙を支援するプログラムに投入し、電子タバコの禁煙支援も含む計画だ。
統計によると、先進国で構成する経済協力開発機構(OECD)加盟38か国の中で、豪州は喫煙率が最低レベル。2019年の調査では15歳以上の喫煙率は11.2%だった。これはOECD平均の23%をはるかに下回った。ちなみに日本も同平均以下の16.7%で、2004年以降ゆるやかに減少している。