2017年05月31日 (水) NHK 村田 英明 解説委員 http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/300/272052.html
きょう5月31日は世界禁煙デー。WHO・世界保健機関は、たばこによる健康被害が深刻な発展途上国などに対し対策をとるように求めていますが、そうした禁煙後進国の中には日本も含まれています。村田英明解説委員に聞きます。
Q1:WHOはどんな対策を求めているんですか?
A1:がんなどの病気になる人を減らすため、たばこを吸う人を減らす対策とともに、他人のたばこの煙を吸う受動喫煙対策を進めるように求めています。その受動喫煙を防ぐため、海外では49か国で飲食店などの公共の屋内を全面禁煙にする法律ができていますが、日本は対策が遅れていて、WHOから世界で最低レベルのレッテルを貼られています。
Q2:日本で対策が進まないのはなぜですか?
A2:1つは、労働者の健康に対する意識の違いがあります。
海外では、喫煙可能な店や分煙を認めると、従業員が煙を吸うことになって働く人の健康を守れない。だから、全面禁煙にして、店の外で吸ってもらうルールが広がっています。
これにならって厚生労働省は、公共の建物の中を原則禁煙とする法案を今の国会に提出する準備を進めていますが、自民党内に喫煙可能な店や分煙を認めるべきだという意見があり、調整は難航しています。
対策が進まないもう1つの理由は、子どもの受動喫煙のリスクが真剣に議論されていないことです。
Q3:子どもにはどんな影響があるんですか?
A3:最近の研究で、受動喫煙は、赤ちゃんが突然死する「乳幼児突然死症候群」やぜんそくを発症するリスクを高めることが明らかになっています。
また、妊娠中の母親が受動喫煙にさらされると胎児の発育が遅れる場合があるなど、生まれてくる赤ちゃんに影響を及ぼすおそれがあることもわかってきています。
Q4:では、どうすればいいでしょうか?
A4:店で働く従業員も幼い子どもも、自分の意思で受動喫煙から逃れることはできません。そうした弱い立場の人たちの健康を守れるように対策を進めなければなりません。そのためには、子どもが遊ぶ公園や通学路など屋外での対策も必要です。
法案づくりで足踏みしている場合ではありません。一日も早く禁煙後進国の汚名を返上できるように、喫煙のルールを決める必要があります。
(村田 英明 解説委員)