受動喫煙で都議会委員会意見聴取

2018/06月21日 16時43分  NHK https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20180621/0013523.html

 

東京都が提出した受動喫煙防止条例案を審議する東京都議会の厚生委員会が開かれ、国の法案より規制の厳しい都独自の条例案に賛成と反対、それぞれの立場をとる業界団体から意見を聞きました。

東京都は、受動喫煙対策を強化するため、従業員を雇っている飲食店は規模にかかわらず、屋内を原則禁煙にするなどとした国の法案より厳しい内容の独自の条例案を開会中の都議会の定例会に提出しています。
この条例案を審議する都議会の厚生委員会が開かれ、条例案に賛成と反対、それぞれの立場の業界団体から、参考人として意見を聞きました。
このうち賛成の立場で出席した「東京都医師会」の尾崎治夫会長は、「たばこは、狭い空間で吸うほど副流煙の濃度は濃くなる。面積が狭い飲食店を規制の例外としないのは従業員を守るという視点を大事にしている」と述べ、条例案を評価する考えを示しました。
一方、都の条例案に反対する飲食業の7つの業界団体の代表として出席した「東京都麺類生活衛生同業組合」の田中秀樹理事長は、「受動喫煙の防止は重要で異議を唱えるものではない。ただ、大半の店が狭く喫煙スペースを確保できない状況だ。この場合、全面禁煙にするか、従業員を解雇して喫煙を可能とするのか、冷酷な選択を迫られている心境だ」と述べ、中小の飲食店に一定の配慮をすべきだと訴えました。
厚生委員会は、21日の意見を踏まえて都の条例案の審議を進め、今月25日の委員会で採決を行う予定です。

東京都が都議会に提出した「受動喫煙防止条例案」は、いまの国会で審議されている受動喫煙対策を強化する健康増進法の改正案より、規制が厳しい内容となっています。
国の法案では新たに営業を始める飲食店や経営規模の大きな店は喫煙専用のスペース以外は禁煙とする一方で、客席の面積が100平方メートル以下で、経営規模の小さい既存の飲食店は、店先に表示をすれば喫煙を可能にできる、経過措置が盛り込まれています。
これに対して、都の条例案は、店の面積や経営規模にかかわらず、従業員を雇っている飲食店は屋内を原則禁煙とするため、都内の飲食店のおよそ84%が規制の対象になるとみられています。
都の条例案でも、喫煙専用のスペースを設けた場合は、屋内でたばこを吸うことができます。
急速に普及している火を使わない加熱式のたばこについては都の条例案も国の法案と同じように、専用の部屋を設ければ飲食しながらの喫煙を認めることにしています。
また、幼稚園や小中学校、それに高校については、国の法案が敷地内を禁煙とした上で屋外の喫煙場所の設置は可能にしましたが、都の条例案は子どもを受動喫煙から守ることを徹底するため、屋外の喫煙場所の設置も認めないとしています。
都は、条例案が成立した場合、来年9月1日までに学校などの敷地内の禁煙を行い、再来年・2020年の4月1日に飲食店への規制を含め、全面的に施行する考えです。

東京都の受動喫煙防止条例案では、従業員を雇っている飲食店は屋内を原則禁煙にするとされているため、店の経営者らは今後の対応を迫られています。
東京・千代田区のそば店「浅野屋本店」では、去年11月、45席ある座席のスペースの一部に換気設備や仕切りのドアをつけ、およそ360万円かけて分煙の店舗に作りかえました。
しかし条例が成立すれば、全面禁煙にするか、座席数を減らして喫煙専用のスペース作るかの選択を迫られることになります。
常連客からは「禁煙になると店に来ることができなくなる」という声も聞かれ、この店ではまだ方針が決まっていません。
「浅野屋本店」店主の和久井喜治郎さんは「小さな店にとって喫煙専用スペースを作る費用は決して安くなく、店の経営に影響する。店や客の立場を考えず条例を作ろうとする東京都の姿勢には納得がいかないし、条例案には反対だ」と話していました。

東京都は、受動喫煙対策を強化する都独自の条例の制定に向けて、区市町村や規制の対象となる飲食店への支援を拡充する方針です。
このうち飲食店に対しては、都の条例で規制の対象となる中小規模の飲食店が喫煙専用室を設置する場合、300万円を上限に設置費用の90%を補助し、負担の軽減を図るとしています。
区市町村に対しては、屋外に「公衆喫煙所」を設置する場合や、住民や飲食店などから条例についての相談に応じる窓口を設ける際に、その費用の全額を補助するとしています。
また区市町村が、医療機関の禁煙外来を利用する人に医療費を助成する制度などを設ける場合には、その取り組みを支援することも検討したいとしています。

受動喫煙対策をめぐる国際的な状況について詳しい地域医療研究所の中村正和医師は、都の条例案について「日本の受動喫煙対策に対するWHO=世界保健機関の評価は、4段階評価のうち最低の『不可』だが、都の案が可決されると1ランク上がる」と評価しています。
その上で、「受動喫煙の本質は有害物質で、年間1万5000人が亡くなっていることだ。国際的に見れば対応が遅いが、これをスタートにより望ましい規制に段階的に上げていくことが必要だ」と話していました。