来年の東京オリンピックでのたばこの扱いについて、大会組織委員会は、競技会場の敷地内には喫煙所を設けず、完全に禁煙にする方針を固めました。夏のオリンピックで競技会場全体が禁煙になるのは初めてとみられます。
東京大会でのたばこの扱いについて、組織委員会はこれまで競技会場の建物の中は禁煙にする一方、敷地内には喫煙所を設け、場所を限定する形で喫煙を認めることも含めて検討を進めてきました。
しかし、WHO=世界保健機関とともに「たばこのないオリンピック」を進めているIOC=国際オリンピック委員会の強い意向を踏まえ、組織委員会は競技会場の敷地内には観客やスタッフが喫煙する場所は設けず、競技会場全体を完全に禁煙にする方針を固めたことが分かりました。
居住スペースとなる選手村など一部の施設では喫煙所の設置も検討されています。
組織委員会によりますと、前々回のロンドン大会や前回のリオデジャネイロ大会は、競技会場でも敷地内には喫煙所を設けていたということで、夏のオリンピックで競技会場全体が禁煙になるのは初めてとみられます。
一方で、去年の冬のピョンチャン大会では競技会場全体を禁煙としたものの、会場周辺での喫煙でぼやになる問題もあったということで、組織委員会は禁煙の徹底や会場外での喫煙について、自治体などと協力しながら対策を検討することにしています。
「オリンピックの精神に合致」
受動喫煙の対策に詳しい産業医科大学の大和浩教授は「IOCは、たばこのないオリンピックを実現することをWHOと合意文書で取り交わしているので、東京大会でたばこを吸わない、吸う場所を残さない、ということは、オリンピックの精神に合致する。たばこによる健康被害から人類を守ろうというのが世界の流れだ。日本は世界のたばこ対策から取り残された存在だったが、オリンピックがきっかけになって大きく動こうとしている」と方針を評価しました。
そのうえで、運用に向けた課題として観客などへの周知を徹底することを挙げ、「電車の中づり広告や駅の階段などに、改札を出たらたばこを吸う場所がないことをずっと掲示すれば効果はある。町なかのボランティアのユニフォームに禁煙を示すマークやことばをつけることもいい思う」と話していました。
禁煙の動き広がる
受動喫煙をめぐっては、去年、改正健康増進法が成立し、学校や病院、行政機関などは屋内を完全に禁煙とし、敷地内の屋外では喫煙スペースであることを示す標識などを立てた場合でのみ、喫煙ができると定められています。
さらに東京都の条例では、より厳しい内容となっていて、幼稚園、保育所、小中学校と高校では、屋外でも敷地内はすべて禁煙となります。また、都立の動物園や水族園ではすでに全面的に禁煙になっています。
このほか、外食チェーンや居酒屋チェーンでも自主的に全面禁煙の動きが相次いでいて、東京オリンピック・パラリンピックを前に受動喫煙への対策が広がっています。
2020年東京五輪・パラリンピック大会組織委員会が、大会期間中に競技会場の敷地全体を禁煙とする方向で検討していることが22日、大会関係者の話で分かった。国際オリンピック委員会(IOC)の掲げる「たばこのない五輪」の実現を目指す。
IOCは1988年から五輪の会場を禁煙とし、2010年には世界保健機関(WHO)と「たばこの煙のない五輪」の推進で合意。五輪開催地では、飲食店などの屋内全面禁煙が広がった。国内でも東京都で18年6月、飲食店などを原則として屋内禁煙とする受動喫煙防止条例が成立し、五輪前の20年4月に全面施行される。
組織委はこうした状況を踏まえ、東京大会では競技会場の敷地内全体で新たな喫煙所は設けず、既存の喫煙所があった場合でも、大会中は閉鎖して使えないようにする方向だ。
18年の平昌冬季五輪では一部で、禁煙のはずの会場内で喫煙する姿が見られたほか、たばこの吸い殻のポイ捨てが問題視されるケースもあったという。東京五輪でも観客やスタッフの理解を進め、実効性をどう担保するかが鍵となりそうだ。