新型たばこで症状悪化 退職余儀なく 化学物質過敏症 「誘発の恐れ知って」

2021/03/16 12:50  新潟日報 https://www.niigata-nippo.co.jp/moretoku/20210316604407.html

 

 「職場の新型たばこの臭いで仕事を辞めました」。もっとあなたに特別報道班(モア特)に、女性から新型たばこの害を訴える声が届いた。モア特はこれまで、洗剤などを原因とする化学物質過敏症を取り上げてきた。女性は「かっこいいなどのイメージがある新型たばこも化学物質過敏症を引き起こす可能性があることを、もっと多くの人に知ってほしい」と訴える。

 新潟市の50代女性にとって、職場は逃げ場がなかったという。新型たばこを吸って喫煙室から戻った同僚の息から「吐き気やめまい、気道が狭くなるような息苦しさ」といった症状が出た。喫煙者と会話した非喫煙者の呼気でも「意識がうつろになった」。服や壁についている臭いもきつかった。

 新型たばことして普及している加熱式たばこは、たばこの葉を電気で加熱して発生した蒸気を吸引したり、加熱して霧状になった溶剤をたばこ葉に通して吸引したりする。昨年4月施行の改正健康増進法では、製品の販売歴が浅く健康への影響が判明していないとして、飲食店に対し加熱式専用の喫煙室での飲食を認めている。

 ただ、女性は「紙巻きたばこと比べ、新型は健康の害や臭いが少ないというイメージがあるが、私の場合はより症状が出た」と語る。職場ではマスクを重ね、体に臭いがつかないようショールをかぶったが、症状は悪化した。

 職場の理解も得られなかった。加熱式たばこを吸う同僚から離れた席に何度も移動したが、上司にはわがままと捉えられ、職場で孤立した。「新型ウイルス禍で次の仕事が簡単に見つかると思えないが、限界だった」。2月、会社を辞めた。

 たばこ対策について研究する新潟大の関奈緒教授=公衆衛生学=は「紙巻きたばこにはない化学物質が含まれている可能性がある」と加熱式たばこの危険性を指摘する。

 「たばこは吸った息の3分の1がそのまま出てくる」と関教授。奈良県生駒市では職員が喫煙後45分間は庁舎内のエレベーターを使用しないといった事例もあるほどだ。

 関教授は「アレルギーの人にとっては命に関わる問題」として、たばこの臭いで苦しんでいる人がいるということを喫煙者と会社が理解し、できる範囲で対処するよう求めている。


◎社員や客守る禁煙ルール 新潟・川内自動車

 たばこの健康被害から社員やお客らを守ろうと、新型たばこを含めて社内で厳しい禁煙ルールを設けた会社がある。

 新潟市秋葉区の川内自動車では「カワウチ禁煙法」と名付け、2015年から禁煙のルールをつくった。それまでは社内に喫煙室があったが、勤務中は会社内外問わず喫煙を禁止に。勤務時間外も、顧客から見える場所や、事務室など社内の閉ざされた空間での喫煙を禁止にした。非喫煙者には手当ても支給している。

 同社の大村和美・企画広報課長は「たばこを吸わない社員は、臭いにストレスを感じても言いだしにくかった。吸えない環境を会社が整えることで禁煙を促し、非喫煙者や家族の健康を守りたい」と語る。ルール導入後1年は禁煙の治療費も補助。喫煙率は15年12月の47・5%から、今年1月には20・09%に減少したという。

 禁煙法に後押しされ、たばこをやめた男性社員(50)は「たばこをやめ、その臭いの強さに気づいた」と打ち明けた。