喫煙で医療費1兆4900億円 14年度、厚労省報告書 

2017/5/30 23:33
日本経済新聞 電子版 http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG30H74_Q7A530C1CR8000/ 

 

 厚生労働省の研究班は2014年度に喫煙が原因で余計にかかった医療費は約1兆4900億円で、国民医療費の4%近くを占めていたとする報告書をまとめた。患者数は100万人を超え、病気で入院し、働けないことによる損失額は約2500億円に上ると推計した。研究班は禁煙施策をより一層、推進すべきだとしている。

 研究班(代表者・地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センターの中村正和センター長)は、厚労省が16年度に公表した「たばこ白書」で喫煙との因果関係が確実だとした病気を対象に、40歳以上の国民医療費から算出した。

 喫煙者本人では79万人が病気となり、医療費は1兆1669億円に上ると推計した。内訳をみると、肺がんや胃がんなどによる「がん」が7087億円で最も多かった。心筋梗塞などの「虚血性心疾患」が2001億円、脳梗塞などの「脳血管疾患」が1953億円、「慢性閉塞性肺疾患」が626億円と続いた。

 一方、受動喫煙では24万人が病気となり、医療費は3232億円だった。内訳では、脳血管疾患が1941億円、虚血性心疾患が955億円、肺がんが335億円という順番だった。

 研究班は喫煙による生産性の損失額も分析した。がんなどの病気で入院を余儀なくされ、働けないことによる経済的な損失額を2493億円と試算した。

 休憩時間を除く勤務時間中に、たばこを吸うため席を離れることによる損失額を5496億円と見積もった。

 研究班で分析を担当した東京大大学院の五十嵐中特任准教授は「無視できない金額がたばこで失われている」と指摘。その上で、「100万人以上が病気になっているという健康面の被害の大きさにも目を向け、対策を急ぐ必要がある」と話している。