2015年までの25年間で平均寿命は4.2歳延びたが、平均寿命が最も長い県と短い県の差が0.6歳広がったことが20日、東京大学の研究成果で分かった。健康で過ごせる期間(健康寿命)の差も0.4歳拡大。こうした「健康格差」拡大の原因は解明できておらず、東大の渋谷健司教授は「医療の質や生活習慣など詳細な研究が必要」と指摘している。
研究は東京大学大学院の国際保健政策学教室が米ワシントン大の保健指標・保健評価研究所と共同で実施した。成果は英医学誌ランセットに20日掲載された。
研究では厚生労働省などのデータを使って分析したところ、男女合わせた日本人の平均寿命は1990年の79.0歳から2015年の83.2歳まで4.2歳上昇した。
ところが都道府県別では1990年に最も平均寿命が長い長野県(80.2歳)と短い青森県(77.7歳)の差は2.5歳だったが、2015年には最も長い滋賀県(84.7歳)と最も短い青森県(81.6歳)の差は3.1歳で、25年間で差は0.6歳広がっていた。
健康で過ごす期間を示す健康寿命も1990年に最も長い長野県(71.5歳)と最も短い高知県(69.2歳)の差は2.3歳だったが、2015年には最も長い滋賀県(75.3歳)と最も短い青森県(72.6歳)の差は2.7歳で、0.4歳拡大した。
こうした健康格差について、1人当たりの医療費や人口当たりの医師数などのほか、生活習慣などのリスク要因との関係を分析したが、関係性は見いだせなかった。
一方、年齢調整した人口10万人当たりの死亡率は1990年の584.1人から2015年の414.8人まで29%減少。ただ05年以降は低下率が鈍化しているという。
病気になる要因は15年でみると、食習慣や喫煙など生活習慣が最も高く、次いで高血圧や高コレステロールなどメタボリック症候群関連だった。
特に男性は喫煙が死亡の18.9%に関係し、女性は塩分が高いなど不健康な食事が死亡の18.0%に関係していた。男性も不健康な食事は死亡の18.8%に関係し、喫煙に次いで高かった。
渋谷教授は「喫煙対策は喫緊の課題。男女とも食生活の見直しも不可欠」と指摘。「今後、こうした都道府県間の格差をさらに詳しく分析し、実態を踏まえた対策を打ち出すことが必要」と訴えている。