がん社会を診る受動喫煙対策 コンビニから  中川恵一

2017/8/17付
日本経済新聞 夕刊 http://www.nikkei.com/article/DGKKZO2006982017082017NZBP00/ 

 

 受動喫煙対策を強化した健康増進法改正案の提出は、先の通常国会では見送られました。飲食店などでの規制について、自民党と厚生労働省の方針に大きな溝があるためです。法改正後2年程度の周知期間が必要で、2019年9月に開幕するラグビーワールドカップには間に合わない可能性が大です。

 受動喫煙に関して全国157店舗のファミリーレストランを対象にした調査があります。「全席禁煙」を始めた店では、導入後1年目の営業収入が2%増加し、2年目には3.4%増えました。一方、「分煙」の場合、増加は1%未満にとどまりました。

 日本たばこ産業の調査では、今年5月時点の喫煙者率は過去最低の18.2%です。全国の男女約1万人を対象にした調査でも、受動喫煙を不快と感じる人は全体で82.2%もいます。全面禁煙がレストランにとってプラスの方向に働くのは当然だと思います。受動喫煙を受けた場所についてはトップが飲食店(62.1%)、次いで路上(60.4%)、遊技場(59.3%)、コンビニエンスストアの出入り口(56.7%)でした。

 飲食店の規制ばかりが話題になっていますが、コンビニとたばこは切っても切れない関係にあります。コンビニの売り上げの約4分の1はたばこです。健康・自然志向をうたう店舗でも公然とたばこが販売されている姿には正直、違和感を覚えます。

 日本も締結国の「たばこ規制枠組み条約」のガイドラインには、「たばこ製品の陳列と露出は、広告および販売促進に相当するため、禁止しなければならない」と規定していますから、コンビニでの店頭販売は大きな問題です。

 「世界禁煙デー」の5月31日、国立がん研究センターは、コンビニなどでのたばこの陳列販売に関するアンケート調査の結果を公表しました。陳列販売禁止について55.5%が評価し、自動販売機の設置禁止についても7割近くが賛成でした。

 セブンイレブンは灰皿撤去の方針を打ち出しており、ファミリーマート、ローソンも対策をとろうとしています。日本の受動喫煙対策は「前世紀並み」といわれています。まず、日本が世界に誇るコンビニから変わってほしいと願っています。

(東京大学病院准教授)