2018/2/23 日経 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO2725800022022018PP8000/
自民党は22日、厚生労働部会を開き、受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案を了承した。多くの人が使う施設を罰則付きで原則禁煙にする一方、客席面積が100平方メートル以下の飲食店は喫煙を認めるなど例外も多い内容だ。より厳格な規制を求める意見もあったが、容認論が大勢を占めた。政府は3月上旬にも閣議決定し、今国会での成立をめざす。
厚生労働省は昨年の通常国会で法改正をめざしたが、飲食業の客離れなどを心配する自民党の反対で提出をあきらめた。当時の厚労省案は面積30平方メートル以下の小規模なバーやスナックを除く飲食店は原則禁煙だった。
今回の案では、客席面積が100平方メートル以下で資本金5000万円以下の既存店は「喫煙可」などと店頭に表示すれば喫煙を認める。原則禁煙の大規模な飲食店も煙を外に出さない「喫煙専用室」内なら吸える。
禁煙場所で吸った悪質な違反者には最大30万円の過料を科す。喫煙場所に適切な表示をしなかったり、禁煙場所に灰皿を置いたりした施設管理者は最大50万円の過料を払わなければならない。
厚労省は喫煙が認められる既存飲食店を最大で全体の55%と見積もる。当初案より大幅に広がったことを受け、自民党厚労部会の出席者は「地方の飲食業に配慮した案になった」と評価した。
昨年の厚労省案を主導した塩崎恭久前厚労相は「海外では禁煙にしても飲食店の経営に影響はなかった」と批判。「党議拘束を外すのがあるべき姿だ」と主張した。
別の規制推進派は「健康増進と言いながら受動喫煙を強いるスモークハラスメントだ」と訴えた。国際的には飲食店が全面禁煙の国も多く、今回の案はたしかに緩い。
ただ、受動喫煙防止の議員連盟をそれぞれ率いる尾辻秀久元厚労相と山東昭子元参院副議長が容認に回り、反対論は広がりを欠いた。山東氏は部会後、記者団に「不満はあるが野放しよりは良い」と語った。
既存店と新規店の扱いを分けたのが今回と昨年の案の大きな違い。新たにできる店は小規模でも専用室以外で吸えない。飲食業界は入れ替わりが激しく、規制のかかる店舗が年々広がる。厚労部会幹部によると、規制推進派の議員らはこうした点を評価したという。
現行の健康増進法で飲食店などの受動喫煙対策は努力義務。望まない受動喫煙の防止に向け、自民党は法案を早期にまとめることを優先した。
公明党も22日、厚労部会で法案の審査に入った。20歳未満が受動喫煙の被害にあわないように厳格な運用を求める声などが出て、この日の了承は見送った。抜本的な反対論ではなく、最終的には了承する見通しだ。政府は2020年の東京五輪・パラリンピック前の全面施行をめざす。
自民党本部で開かれた厚生労働部会(22日、東京・永田町)