東京都内の自治体で、独自の受動喫煙対策が広がっている。調布市は対策に取り組む飲食店の登録制度を設け、豊島区は子育て中の親を対象に禁煙外来の受診補助を2018年度に始める。国や都の規制への動きは鈍いとして先行して実施し、20年の東京五輪・パラリンピックに向け煙のない環境の実現を目指す。
調布市は五輪や19年のラグビーワールドカップ(W杯)をにらみ、「受動喫煙ゼロの店」の登録を1月に始めた。市内には味の素スタジアムなど両大会の競技会場がある。「国や都の受動喫煙対策が後れる一方、外国人客を含め安心して食事ができる環境を整備する」のが目的だ。
屋内だけでなく敷地内を禁煙にした店も対象にする。喫煙室の設置を認めず、加熱式たばこも禁止だ。登録店は店頭にステッカーを掲示する。
外国人も多く訪れる六本木がある港区は「煙のないレストラン」と名付けた冊子を作製した。敷地内禁煙、店舗内禁煙など禁煙の状況に応じて店舗を分類した。ホテルなどで無料配布し、19年度には外国語版の発行を検討する。
飲食店での禁煙を推進するだけでなく、喫煙をやめるよう個人に促すのが豊島区だ。子どもの受動喫煙を防ぐため、子育て中の親などを対象に禁煙外来の助成を18年度に始める。妊産婦や18歳未満の子どもを育てる住民に2万円を支給する。飲食店の禁煙が進む結果、代わりに家庭の喫煙が増えると見て対策を講じる。
受動喫煙を巡っては政府が3月9日、対策を事業者に義務付ける健康増進法改正案を閣議決定した。飲食店は原則禁煙で違反者には罰則もある。ただ、客席面積100平方メートル以下の店は例外にするなど、後退したとの批判もある。都は2月開会の都議会に罰則付きの条例案を提出する方針だったが、国の法案と整合性を取るとして先送りした。