2018/6/15 6:00 日経 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31784400U8A610C1L71000/
千葉市は制定を目指している受動喫煙防止条例案で、従業員を雇う飲食店を原則屋内禁煙にする方向で検討に入った。世界の五輪開催地で屋内全面禁煙が広がる中、2020年東京五輪・パラリンピックの開催地として東京都に足並みをそろえる。横浜市やさいたま市など、首都圏の他自治体の判断にも影響を与えそうだ。
千葉市が検討に入った条例案では、従業員のいる飲食店は原則屋内禁煙とする。政府が国会に提出した健康増進法改正案では、客席面積100平方メートル以下は店内喫煙が可能だが、千葉市の条例案は面積にかかわらずに禁煙とする。
煙を遮断するブース内での紙巻きたばこの喫煙は認めるものの、飲食はできない方向で調整する。加熱式たばこについては屋内禁煙の対象外とするほか、ブースの設置費用について市独自の助成も検討する。
主な規制内容は、都が6月議会に提出した受動喫煙防止条例案と同様だ。20年東京五輪の開催地として足並みをそろえることで、国際オリンピック委員会(IOC)が掲げる「たばこのない五輪」実現を自治体レベルで推進する。設置費用の助成規模や、違反した場合の過料などは今後詰める。
千葉市の受動喫煙対策を巡っては、熊谷俊人市長が17年12月の市議会本会議で、受動喫煙防止条例を制定する方針を表明。関係者によると、熊谷市長は都が条例案を公表する前から「客席面積での線引きは難しい。人に着目した規制にすべきだ」と市幹部に伝え、従業員の労働環境などを考慮した条例案の内容を議論してきたという。
市議会では、最大会派の自民党からは目立った反対意見は今のところ出ておらず、公明党は市独自の受動喫煙対策を求めている。条例案が提出されれば成立する公算が大きい。市は9月市議会にも提出する。
4月下旬に開かれた首都圏の1都3県と5政令市で構成する9都県市首脳会議では、小池百合子都知事の提案を受けて、受動喫煙対策で連携することで合意。出席した首長からは「広域的な取り組みが必要」「共通のルールも必要」などの意見が出ていた。
横浜市やさいたま市は五輪の競技会場を抱えている。今後は横浜市やさいたま市の対応が注目される。
2018/6/16 0:30 日経 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31847060V10C18A6L71000/
千葉市の熊谷俊人市長は15日、2018年度中の制定を目指す受動喫煙防止条例案で、東京都が6月議会に提出した条例案と同水準の、国より厳しい規制に踏み込む考えを示した。市内の従業員を雇う飲食店は原則屋内禁煙とする方針をにじませた。同日の市議会で市長は「未成年者や労働者を守る視点で対策を検討する」と強調。早ければ9月議会に条例案を提出する。
熊谷市長は市議会本会議の一般質問で、公明党市議が「受動喫煙の機会が最も多いのは飲食店だ。すべての飲食店を禁煙にすれば懸念が払拭されるのではないか」とただしたのに対し、「対策は市民の健康を守り、2020年東京五輪・パラリンピックの開催都市として環境を整備するために重要」と答弁した。
「国会で審議中の法案の内容から踏み込んだ実効性のある条例の制定に早急に取り組む必要がある」とも述べた。市長は飲食店の規模による規制に否定的で、東京都と同じく、従業員を雇う飲食店は屋内全面禁煙を原則とする条例案の制定が念頭にあるとみられる。
市内には飲食店や喫茶店が約1万店あるが、すでに対策を取る飲食店もある。市内で7店を営業する回転すし店「すし銚子丸」は10年ほど前から全店舗を屋内全面禁煙とする。「個室がなく、すしの風味をたばこの煙で損ねてしまう」との判断があり、条例制定も「影響はない」と冷静だ。
一方、県内の他の自治体は様子見だ。東京五輪でサーフィンの競技会場となる一宮町は「国や他の開催都市の動向を見ながら、取り入れられる所は取り入れる」(オリンピック推進課)方針。ただ、同町には小規模な飲食店が多く一律の規制は経営への打撃が大きいため「事業主の判断に委ねるしかない」とする。
県も条例制定には慎重な姿勢だ。国会で審議中の健康増進法改正案の成立を待って具体的な受動喫煙対策の検討に入る方針だが、森田健作知事は「地域によって罰則などに関する条例が異なるのは問題だ」とする。
千葉市は、熊谷市長が17年12月の市議会本会議で受動喫煙防止条例の制定方針を示して以降、複数の基準の条例案を検討してきた。市長は「自らの意思で受動喫煙を防げない従業員や未成年を守る視点」を重視し、五輪開催地の同市でも都と同等の規制基準の条例を目指すとみられる。
今後、規制内容や店舗側の対策への助成制度などの詳細を詰め、早ければ9月の市議会に条例案を提出する見通しだ。