千葉市「受動喫煙防止条例」成立へ 五輪開催へ国より厳しく 監視や摘発、実効性カギに

2018/8/21  日経 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO34358730Q8A820C1L83000/ 

 

 従業員を雇う飲食店を原則屋内禁煙にする千葉市の受動喫煙防止条例案が9月の市議会で成立する見通しとなった。東京都議会で6月に成立した条例に近い内容で、政令市では初めて国の法律より規制を厳しくした。市は今後、ほかの自治体にも同様の条例制定を働きかける方針だか、どこまで実効性を持たせられるかが焦点となる。

 千葉市の条例案では従業員を雇う飲食店は規模にかかわらず、飲食できない喫煙専用室を設けない限り、店内では喫煙できない。7月に成立した改正健康増進法では客席面積100平方メートル以下の店では店内喫煙が可能だが、より踏み込んだ。

 国の規制を上回る受動喫煙条例では東京都が先行する。千葉市の条例案は都と似た内容だが、バーやスナックなど風俗営業法に該当する飲食店は規制対象外。条例案は9月6日開会の市議会に提出される見通しで、東京五輪開催前の2020年4月の施行を目指す。

 熊谷俊人市長が同条例の概要を正式発表したのは7月12日の記者会見だった。ただ17年12月の市議会で条例制定の方針を表明した前後から、水面下では議会側との調整に着手。6月に市議会全会派が国より厳しい規制を求める申し入れ書を熊谷市長に提出し、条例制定への足並みがそろった。

 飲食店からは「喫煙ブースを設置できない小規模店にも配慮してほしい」(千葉県飲食業生活衛生同業組合の小山内仁理事長)など反発もある。一方で市幹部は「都議会と違い、最大会派の自民も含む全会派の賛同を得る意義は大きい。五輪開催都市として明確なメッセージを発信することになる」と話す。

 千葉県内では一宮町も五輪の競技会場となっているが、現時点で条例制定の動きはない。千葉市が条例制定を先行することには「観光客や県民が混乱する」との批判もある。ただ県が市町村を一律に規制する条例制定に慎重姿勢を崩していないため、独自の規制に踏み切った。

 熊谷市長は「五輪開催エリアはある程度統一的な方向になることが望ましい」として、条例制定後は県内外の自治体にも同様の条例制定を働きかけていく考え。小池百合子都知事の提案で受動喫煙防止対策の啓発や共通ルールの策定で合意している「九都県市首脳会議」などが呼びかけの場面となりそうだ。

 もっとも条例が成立しても、罰則の適用を含め条例違反の監視や摘発をどう進めるかなど、実効性を持たせるための課題は多い。保健所の人材や財源にも限りがあり、自治体としてきめ細かい制度設計が欠かせない。

 世界潮流の「たばこの煙のない五輪」の実現に向け、抜本的な受動喫煙対策が首都圏で広がるかどうか。先行ランナーである千葉市の本気度が試される。