受動喫煙減らせ、愛知県豊橋市が加熱式たばこ規制案

2019/2/18 12:20 日経 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41394790Y9A210C1CN0000/ 

 

店での喫煙をめぐり、愛知県豊橋市が火を使わない「加熱式たばこ」を紙巻きたばこと同様に規制する全国初の条例案をまとめた。加熱式は健康への影響についての評価が定まっていない。国の規制は紙巻きより緩いが、豊橋市は「影響が不確かでも、望まない受動喫煙は避けるべきだ」と踏み込んだ。店からは「どう対応しようか」と戸惑いの声も上がる。

■飲食店、客対応に悩む

「加熱式のお客さんにまで外に出てもらうのは気が引ける」。豊橋市内で50年続くすし店を経営する70代男性はこう打ち明ける。

現在は店内全席で喫煙可能。2019年春にも全面禁煙とし、加熱式以外は店外での喫煙を求める予定だったが、再考が必要になりそう。一方、店を訪れていた市内の女性(54)は「食事中は加熱式の臭いも気になる」と規制強化を歓迎する。

国は受動喫煙対策を強化するため、健康増進法を改正。20年4月に全面施行され、一定の広さがある飲食店では「飲食不可」の喫煙室でしか紙巻きたばこを吸えなくなる。ただ加熱式は扱いが異なり、専用スペースがあれば飲食しながらでも喫煙できる。

豊橋市が18年11月にまとめた受動喫煙防止条例(仮称)案は、加熱式も紙巻きと同じように規制する。大型や新規の飲食店で吸う場合、飲食不可の喫煙室を利用しなければならない。罰則のない努力義務だが、国よりも強く規制する内容だ。

市健康政策課の担当者は「受動喫煙で病気になる人を1人でも減らしたい」と強調。16年の市民の成人喫煙率は13.9%で、国や愛知県より低いが、がん死者に占める肺がんの割合は21.6%と逆に上回った。市は受動喫煙が主な原因と捉え、全国初の規制に踏み切ったという。

加熱式は販売開始からの期間が短く、まだ健康への影響が定まっていない。厚生労働省は「現時点で将来の健康影響を予測することは困難」との立場だ。独自の条例を定めている東京都も加熱式の扱いについては、国と歩調を合わせている。

一方で豊橋市は、受動喫煙の影響はともかく、加熱式に有害物質が含まれることは確かだとして条例案をまとめた。市健康政策課の大井英昭主幹は「影響が分からないから規制しないというのは、望まない受動喫煙を減らすという改正健康増進法の趣旨に反すると考えた」と話す。

条例案には、学校や病院は屋外も含め喫煙所を設置せず、全面禁煙にすることも盛り込まれた。市は19年の3月議会での成立、20年4月の全面施行を目指す。今後、飲食店事業者らを招いた説明会を開いて理解を求めるが、異論も出そうだ。

■健康への影響、見方は割れる
 加熱式たばこの健康影響に対する見方は分かれている。日本たばこ産業(JT)は「受動喫煙の健康被害について科学的根拠が十分ではない」との立場。国よりも厳しい内容の豊橋市条例案に懸念を示す意見書も2018年12月にまとめた。
 一方、日本呼吸器学会は17年10月、加熱式について「受動喫煙の危険が指摘されている」との見解を発表。見解作成に携わった順天堂大の瀬山邦明先任准教授は「長年のデータがないことは無害と判断する根拠にはならない」として豊橋市の条例案を評価している。