JT、急速に色あせる投資家の買い意欲

2019/5/29 12:28
 日経 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45400300Z20C19A5000000/
 

 

 

(ニコチン入りの液体を気化して吸う)電子たばこが世界中で人気を集めている。きれいな器具が人々を魅了するが、その後にやってくるのは依存症だ。

電子たばこメーカーの米ジュール・ラブズのツイッターのフォロワーの約半分は17歳未満だ。米議会は流行病だとして、たばこと電子たばこの購入最低年齢を21歳に引き上げようとしている。

従来の紙巻きたばこ離れが進む中で、たばこメーカーは苦戦が続いている。日本最大の日本たばこ産業(JT)も例外ではない。かつて世界最大のたばこ市場のひとつだった日本の需要は20年以上低下を続けている。近年は減少ペースに拍車がかかった。

就職希望者に非喫煙者であることを義務付ける日本企業もある。米ファイザー日本法人や損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険など20社以上が来年からそうする予定だ。これに加えて、非燃焼の加熱式たばこ製品は350億ドル(約3兆8150億円)ある日本のたばこ市場の20%も占めるようになっている。

日本では加熱式たばこが成長したが…

紙巻きたばこで「キャメル」などのブランドを持つJTも加熱式たばこ「プルーム・テック」を提供している。しかし日本市場で圧倒的なシェアを誇っているのはフィリップモリスジャパンの「アイコス」だ。米国ではたばこ大手アルトリア・グループが販売しているが、フィリップモリスはアイコスで日本の加熱式たばこ市場の約75%を獲得した。

JTのプルーム・テックのシェアは10%足らずだ。今年ネット通販を開始したが、価格も含めてアイコスとほとんど差がないため、順位の急変は期待できない。

そうだとすれば、JTの株価が5年ぶりの安値をつけたのも当然だろう。過去3年間、リターンはMSCI世界たばこ指数を19ポイント下回った。JTのたばこ事業は不振で、販売量は今年1~3月期だけで8%減少した。急速に利益を伸ばしているのははるかに売り上げの少ない医薬事業だけだ。

JTは成長を続けるために積極的な買収戦略をとっている。昨年の15億ドルもかけたバングラデシュ第2位のたばこ会社の買収もその一例だ。しかし、売上高の25%以上を占める国内のたばこ市場が徐々に縮小しているため、それを補うにはさらに多くの買収が必要だ。投資家は急速にJT株の買い意欲を失っている。

(2019年5月27日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)