2019/7/5 10:00 日経 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46977400U9A700C1EAF000/
飲食店の禁煙化が一段と厳しくなっている。ファミリーレストラン「デニーズ」は、店内に喫煙スペースを設けず全面禁煙に切り替える。喫茶店「ルノアール」も紙巻きたばこを禁止するほか、喫煙客が多かった外食チェーンでも禁煙店の比率が増えている。2020年4月に施行される改正健康増進法に先駆けて、禁煙化の動きが加速しそうだ。
デニーズは全店舗で全面禁煙にする(写真は先行実施店)
改正健康増進法では、紙巻きたばこを吸いながらの飲食は原則禁止になる。加熱式たばこの場合は従来のような喫煙席を設置しても仕切りと換気装置が必要となる。このため、飲食店の選択肢は(1)全面禁煙(2)加熱式たばこ用の喫煙席をつくる(3)紙巻きたばこ用の喫煙専用ブースをつくる、の3つとなる。
セブン&アイ・フードシステムズが約370店を展開する「デニーズ」は7割弱の店舗が、時間帯や場所を区切って分煙にしていた。改正健康増進法の施行に向けて既存店の改装を6月から始めており、20年3月までに全面禁煙に切り替えを終了する予定だ。
分煙の店舗では、喫煙ブースから出てくる喫煙者のにおいが気になるといった声も多かった。また一部の全面禁煙店では喫煙者の来店が減っても家族客や若年層の来店が増え、3~6カ月で禁煙化前の水準に戻ったことから全店を全面禁煙に切り替えていく。
ファミレスでは禁煙化の動きが加速している。サイゼリヤは今年9月の予定を3カ月前倒しして全席を禁煙にした。「ガスト」「ジョナサン」などを展開するすかいらーくホールディングス(HD)は9月までに店舗で一切喫煙できなくする。
一方、喫煙者が多い外食チェーンは岐路に立たされている。利用客の約6割が喫煙者という銀座ルノアールは、20年4月からほぼ全店で紙巻きたばこを禁止する。においがつきにくい加熱式たばこ用の喫煙室を残しながら新たな客層を取り込む。
ただ、カフェや居酒屋の多くは立地に応じて喫煙店と禁煙店を分けることになりそうだ。「ドトールコーヒーショップ」では、立地ごとに禁煙か喫煙ブースを設置するかを判断している。19年2月末で全面禁煙の店舗は3割程度だという。
日本経済新聞社が3~4月に実施した飲食業調査によると、全面禁煙もしくは喫煙ブースを設置し分煙すると回答した企業は207社のうち29%だった。喫煙ブースを設置すると客席数が減ることになる。このため小さな店舗では喫煙客が多くても全面禁煙にする場合が多いようだ。
加熱式たばこについても、現在は飲食と同時に喫煙が認められているが5年後に改めて対応が検討される。自治体によっては条例で加熱式も紙巻きと同様に規制する動きが出ており、受動喫煙対策に対する要求水準が高くなっている。今後を見据え、禁煙化に舵(かじ)を切るチェーンが多くなりそうだ。