2019/10/8 6:30 日経 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50699800X01C19A0L41000/
北海道議会最大会派の自民党・道民会議が2020年1月に完成する道議会新庁舎の会派控室に喫煙所を設けることを決めた。ただ、すんなり設置できるかはまだわからない。他会派は反対で足並みをそろえ、自民会派内にも反対派がいる。喫煙所設置の行方は今後、道議会全体で妥当性を議論することになる。
「現時点でたばこを吸っている方にすぐやめろというのは、なかなか難しい問題だ」。会派の佐々木俊雄議員会長は議員総会後に分煙を決断した理由について、こう説明した。東京五輪・パラリンピックで競技会場敷地内を完全禁煙とする方針を打ちだす流れから大きく遅れた対応で、会派内でも異論は多い。
自民会派内で反対派の藤沢澄雄道議は議員総会後に「今できなかったら将来もできない。(有権者から)相当の批判を浴びるのは覚悟しないといけない」と肩を落とした。とはいえ、これで決着したとは言えない。
自民会派は道議会の過半数にあたる53人を抱えるものの、数の論理で道議会を押し切れるかには疑問が残る。道議は合計100人。仮に自民会派から4人が同議案について反対票を投じるか、採決で欠席すれば議案は否決される。
自民会派は、意見集約などを目的に喫煙所設置に関するアンケートしている。結果は新庁舎内での設置賛成が31人。反対は18人を数えた。18人のうち4人なら、十分に切り崩せる可能性がある。
東京都は五輪直前の20年4月、厳しい条例を全面施行する。従業員を雇う飲食店など、多くの人が利用する施設は原則として屋内禁煙対象となる。同じタイミングで施行する改正健康増進法より踏み込んだ内容だ。
そもそも議会内でぐらい、たばこを我慢できないものか。佐々木会長は「最終的な喫煙に向けた一里塚」と今回の決定が成果であるかのように語った。ただ、道会派の支持団体である道医師会の長瀬清会長は「あしき前例になる」と手厳しい。模範となるべき道議が「やめられないから」我慢しないというのだから、批判は当然だろう。
佐々木会長は喫煙所を設ける工事をするにあたり、日本たばこ産業(JT)から費用の寄付を受けるとしている。議員専用の喫煙所を設置する費用といい、利益誘導を期待する関係者からの利益供与ととられても仕方がない。
自民会派が喫煙所設置を決める前、記者が訪れた札幌市内の理容室で、理容師の女性は「1年前に起きた北海道胆振東部地震で苦しんでいる人はいる。もっと道議会で話し合うことはあるはず」とぼやいていた。
カジノを含む統合型リゾート施設(IR)やJR北海道の経営、地震対策など、道議会で話し合うべき課題は山積している。これ以上喫煙所の設置にこだわり続ければ、道民の代表としての沽券(こけん)に関わる。