[社説]受動喫煙防止を徹底しよう

2020/3/28 19:00 日経社説 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57330110X20C20A3SHF000/

他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙の防止に向け、改正健康増進法が4月1日に全面施行となる。学校や行政機関ではすでに規制が強化されているが、4月からは職場や飲食店などにも対象が広がる。私たちの健康を守る、大事な一歩にしたい。

改正法の最大の目的は、望まない受動喫煙をなくすことだ。受動喫煙による日本の死亡者は年間1万5千人に上るとの推計もある。

取り組むべき対策は施設の類型によって異なる。職場や飲食店では「原則屋内禁煙」だ。喫煙専用室などを設置することはできる。

産業界ではすでに改正法の先を行く企業が目立つ。就業規則で就業時間内の禁煙を明示する、敷地内を禁煙にする、などだ。

働く人の健康は、本人にはもちろん、企業にとっても大事な財産となる。今回の全面施行をぜひ「健康経営」を加速させるきっかけにしてほしい。

飲食店については道まだ半ばだ。一定の条件を満たす既存の小規模店では経過措置として、標識を掲示すれば専用室がなくても喫煙できるとの例外規定があるためだ。ただ東京都など自治体が独自に条例で規制するケースもある。

飲食店など人が多く集まる場所すべてに屋内全面禁煙を義務付けている国は多い。政府・自治体が受動喫煙防止の意義をしっかり説明し、制度を定着させることが、国際水準に近づくためのカギだ。

今回、通常のたばことは別扱いとなっている加熱式たばこについても、知見を蓄積したい。また歩きたばこ対策も課題だ。

厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、習慣的に喫煙している人は18年、17.8%だった。長期的にみると低下傾向にあるが、17年より0.1ポイント上がった。3人に1人が禁煙の意思を持っていた。禁煙治療も後押ししたい。

国際オリンピック委員会と世界保健機関は「たばこのない五輪」を提唱している。東京五輪・パラリンピックは延期になったが、受動喫煙対策は着実に進めたい。