[FT・Lex]禁煙と運動で長生きしよう

2022年2月28日 9:00 日経 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB210U10R20C22A2000000/

研究者によると、子どもは生来、自分は死なないと考える。大人になっても死のことはあまり考えない。だが好奇心から、あるいは老後の計画が必要になって死について考えるようになると、統計学者や政府の「オンライン計算機」(編集注、年齢と性別を入れると寿命を自動ではじき出す英国政府のサイト)が専門家の見解を示してくれる。ここ10年、寿命はあまり延びなかったが、多くの人が自分の寿命と、実際に100歳まで生きる可能性があることを知って驚くだろう。

2011年までの100年間で、英国の平均寿命は10年ごとに3年近く延びた。これは安全と医療が驚異的に進歩したことを映している。女性は依然として男性より4年近く長生きするが、男性の喫煙が減り、心血管疾患の治療法が発達したため、この50年でその差は徐々に縮小した。

ところが11年以降、寿命の延びは次第に小さくなっている。国の財政や生命保険会社にとっては負担が軽くなるが、貧困の増加を示す懸念すべき兆候かもしれない。さらに悪いことに、新型コロナウイルスで男性の平均寿命は縮まった。最新の推計値は79歳で、15~17年より7週間短くなった。

運は自分で切り開ける

この推計は控えめな尺度を用いている。「期間平均寿命」は死亡率が年をとっても現在と変わらないと仮定する。別の指標の「コホート(特定の集団)平均寿命」は(医療の進歩などにより)死亡率の変化を勘案する。これはうれしい考え方だが、算出するにあたっては不確定要素も多い。

比較的前向きな手法もある。人が死亡する一般的な年齢を考慮するものだ。最も一般的な死亡年齢(最頻値)は、男性が86.7歳、女性は89.3歳だ。死亡年齢の中央値は最頻値より少なくとも3年低い。一方、その数字は平均死亡年齢、つまり0歳の人の平均余命より数年高い。0歳の平均余命は乳幼児死亡率の影響を受けやすいからだ。

個人は自分の命の長さを変えられる。50万人近い中年を対象にしたある研究では、禁煙によって45歳の平均余命が6年近く延びたことがわかった運動でも女性の余命は1年近く、男性はその2倍延びた。健康的な食事はそれほどの影響はなく、アルコールの摂取では有意な差がみられなかった。ただしこれは報告例が少ないためかもしれない。

偶然に左右されることは多いが、人は運を自分で切り開くことができる。目的地は変えられないが、健康的なライフスタイルによって、そこに到達するまでの時間を延ばすことは可能だ。

(2022年2月20日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)