ウエルシアHD、たばこ販売取りやめ 小売業界に波及も

2023年3月23日 18:00 日経 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC131EW0T10C23A3000000/

ドラッグストア最大手のウエルシアホールディングス(HD)は2026年2月までに全店でたばこの販売を取りやめる。現在、総店舗の7割に相当する約2000店で扱っているが、健康関連商品を主力とするドラッグストアでたばこの販売は適切ではないと判断した。小売り大手が全店規模でやめるのは珍しく、他チェーンにも影響を与えそうだ。

4月以降に開く新店では、電子たばこを含むすべてのたばこ商品を販売しない取り扱いのある約2000店でも順次、店頭から撤去していく。たばこの販売額は年約150億円で連結売上高の1.5%。販売取りやめによる影響を和らげるため、プライベートブランド(PB)商品の拡充などに取り組む。

たばこは商品単価が高く、飲料などと合わせて購入されることも多いため、小売業にとって販売への寄与度が高いとされてきた。大手コンビニエンスストアでは、チェーン売上高の約3割をたばこが占める。

ドラッグストアでは顧客の健康志向に配慮して取り扱わない店もあるが、大手チェーンがグループ全体で販売をやめるのはまだ珍しい。ウエルシアHDは一般用医薬品(大衆薬)や健康食品、調剤薬局が売上高の4割を占めており「たばこ全廃」で健康配慮の企業イメージを高める。

海外でも米ドラッグストア大手のCVSケアマークなど一部チェーンが、たばこや関連製品の販売を取りやめている。国内でドラッグストア最大手のウエルシアHDが動き、他の小売りチェーンも追随する可能性がある。

厚生労働省が公表している「国民健康・栄養調査」によると、習慣的に喫煙している人の割合は19年で男性が27.1%、女性が7.6%だった。2000年の男性47.4%、女性11.5%から低下した。紙巻きたばこの販売数量も減っており、21年度は20年度比で5.2%減の937億本だった。健康意識が高まり、たばこ離れが進んでいる。

 

ウエルシア全店でたばこ販売を終了へ 「企業理念に反する」と判断

2023/03/24 19:54  朝日 https://digital.asahi.com/articles/ASR3S6GVHR3SULFA012.html

 ドラッグストア最大手のウエルシアホールディングス(HD)は24日、2026年2月末までに全店でたばこ製品の販売を終了すると発表した。喫煙には疾病のリスクが伴い、たばこの販売が同社グループの「健康な暮らしを提供する」との企業理念にも反すると判断したという。

 同HDによると、国内グループ店舗は2月末現在で約2700店。このうち7割強にあたる約2千店でたばこを販売している。ウエルシア薬局のほかコクミンやププレひまわりでも26年2月末までにたばこの販売をやめ、新店ではそもそも販売しない

 たばこの販売をやめる日程は決まり次第、店頭で告知する。たばこは売上高の約1・5%を占める商品だといい、売り上げや損益に一定の影響が出る見通し。ほかの大手ドラッグストアチェーンではスギ薬局がたばこを販売していないほか、トモズも17年から全店でたばこの販売を中止している。 

「たばこ販売終了」の衝撃、ウエルシアHDが抱えていた“矛盾”

ITmedia ビジネスオンライン / 2023年3月24日 18時35分 https://news.infoseek.co.jp/article/itmedia_bizmakoto_20230324174/?tpgnr=busi-econ

 

 ドラッグストア最大手のウエルシアホールディングス(HD)は3月24日、2026年2月までに全店舗でたばこ製品の販売を順次終了すると発表した。「健康な暮らしを提供する」との企業理念を鑑み、今後のたばこ販売は適切ではないと考えたという。業界最大手が決断した「たばこ廃止」の判断は、業界の内外にどのような影響を及ぼすのか。

 同社は現在、全国で2751店舗を展開。このうち7割に相当する約2000店舗でたばこを販売している。3月1日以降に開いている新店舗では、電子たばこを含む全てのたばこ商品を販売していない。

 「『お客さまの豊かな社会生活と健康な暮らしを提供する』との企業理念に照らし合わせ、今後のたばこの販売は適切ではないと考えた」と同社の担当者は話す。同社は「新たなヘルスケア商品・サービスを提案することにより健康産業を邁進(まいしん)」すると発表しており、「たばこ廃止」で企業イメージの向上につなげたい考えだ。

●「たばこ廃止」世界の潮流

 ドラッグストア業界の動向に詳しい流通経済研究所の山崎泰弘・常務理事は「たばこの販売規制は、先進国を中心に世界的に見られる潮流。ドラッグストアという業態の特性からすれば妥当な決断ではないか」と指摘する。

 海外では、米ドラッグストア大手のCVSケアマークが2014年にたばこの販売を全店で取りやめ、社名をCVSヘルスに変更している。ドラッグストアは「ヘルスケアを推進するミッションを持った小売業」(山崎氏)であり、国内大手の「スギ薬局」など、もともとたばこを取り扱っていない企業もある。

 ウエルシアHDは、「健康な暮らし」をうたいながら、たばこを扱っているという“矛盾”を、今回の決定で解消する形になる。

 ウエルシアHDの決定は、たばこ業界に影響はあるのか。山崎氏は「ドラッグストアでのたばこの販売ルート自体はそこまで大きくない」と指摘する。

 たばこの販売ルートが最も大きいのはコンビニエンスストア。チェーン売上高の約3割をたばこが占めるとされている。一方、ドラッグストア業界は成長産業であり、販売チャネルが減ることは、業界にとっては長期的には痛手となりそうだ。

●コンビニにとっては有利?

 ウエルシアHDの決定は、たばこの販売ルートが大きいコンビニにとっては有利に働きそうだ。

 たばこの販売には、健康への配慮の観点から、たばこ事業法に基づき、営業所ごとに財務大臣の許可が必要となっている。販売店の乱立による販売競争を防ぐため、既存のたばこ店との間に一定の距離を設ける距離規制がある。

 これまで近隣のウエルシア薬局がたばこを販売していたことにより、販売許可が下りていなかったコンビニ店舗もあるとみられ、こうした店舗にとっては、たばこ販売のルートが広がりそうだ。

●タバコの売り上げはどうカバーする?

 「たばこ廃止」を決めたウエルシアHDは、たばこの売り上げを今後どうカバーするのか。山崎氏は「ドラッグストア業界が成長する背景には、健康志向の高まりの中で健康食品や医薬品のほか、ペット用品や園芸用品といった日用品の伸長も大きい。これらでカバーできるという判断もあるのではないか」と指摘する。

 また、利益率の観点からみても、たばこは「たばこ税」の比率が大きく、粗利益率は消費財の中で最も低いものの1つ。「売り上げが減るほど、利益のインパクトは大きくない」(山崎氏)という。

 財務省によると、全国のたばこの販売店数は2002年度の約30万7000店舗をピークに、年々減少を続けている。直近の21年末時点では22万9105店まで減っている。

 業界最大手の動きは、たばこの販売店の減少に拍車をかけそうだ。