加熱式たばこの禁煙治療、保険適用を議論(11/22中医協)

2019/11/26  日経BP https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/trend/201911/563240.html



 2019年11月22日に中央社会保険医療協議会(中医協)総会が開催され、2020年度診療報酬改定に向けて、ニコチン依存症管理料について議論が交わされた。

 ニコチン依存症管理料は2006年度診療報酬改定で新設され、2014年までは算定回数が増加していた。だが、その後は喫煙率自体が低下していることもあり、算定回数も低下傾向にある。

 同管理料は、1回目の算定から12週間で5回、禁煙治療をした場合に算定できる。だが、5回の治療を終了した割合は36%にとどまっている。

 また、現在はニコチン依存症管理料の対象外となっている、加熱式たばこに関する現時点での知見も紹介。加熱式たばこの主流煙に健康影響を与える有害物質が含まれていることは明らかであるが、販売されて間もないため、現時点では受動喫煙による将来の健康影響を予測するのは困難で、研究や調査を継続していくことが必要とした。

 今回、厚生労働省は治療の手段を増やす観点から、テレビ電話など情報通信機器を使った禁煙治療について、委員の意見を求めた。なお、この際、情報通信機器を使った禁煙治療における継続禁煙率について、機器を用いない場合との有意差はなかったとのデータも示した。

 全国健康保険協会(協会けんぽ)理事の吉森俊和氏は、「ニコチン依存症管理料は継続的な治療が必要。治療上の懸念がないのであれば、継続率を勘案すれば情報通信機器を用いるという方向性も理解できる」と前向きな姿勢を示した。

 一方、日本医師会常任理事の松本吉郎氏は、「情報通信機器を用いた診療を組み合わせた診療については、通常の対面診療との違い、例えば呼気一酸化炭素濃度測定器の利用や、処方箋の取り扱いなどについて、しっかり整理した上での検討が必要」と慎重な見方を示した。

 日医副会長の今村聡氏は、最終的に禁煙を達成できたかどうかの評価方法として、対面で行うのかどうか、明確化するように厚労省に求めた。厚労省は「別途検討する必要がある」とした。

 健康保険組合連合会(健保連)理事の幸野庄司氏も、情報通信機器による禁煙治療への評価に当たっては、慎重な意見を述べた。「2016年度改定で対象者を拡大したが、算定回数がその時期から減少している。これは本当に喫煙率の減少なのか、そうではなくて脱落者が多いのではと懸念される。まずは現状の3割にとどまる対面診療の終了の割合を向上させるための対応が必要であり、情報通信機器を対象にしていく場合には、慎重に検討していくべきだ」と指摘した。

 一方、加熱式たばこの喫煙者をニコチン依存症管理料の対象とするかどうかについて、松本氏は「受動喫煙による健康への影響は、販売されたばかりでデータはないということだが、有害物質が含まれていることは明らか。加熱式たばこであろうが、ニコチン依存症を治したいという患者について、この点数の改定をすることには異論はない」と賛同した。

 一方、健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏は「加熱式たばこは、調査研究をしていくべきであり、対象に含めるかは時期尚早」との考えを示した。

 日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理の宮近清文氏も「ニコチン依存症管理料は、その効果をまず検証すべきだろう。そもそもこの管理料はいろんな問題を抱えていると認識している。この検証がされないうちに、加熱式たばこの適用の妥当性を論じること自体が問題だ」と指摘。総会での議論を見る限り、診療側、支払い側の意見は折り合わず、引き続き検討されることとなった。

(出典:中医協総会資料)