2019/08/21 05:00 日経 xTECH https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00084/00078/
Q.ソフト開発会社に勤務しています。先日、会社から一方的に「たばこ休憩禁止」「喫煙室の撤去」を通知されました。業務中は我慢しますが、昼休みも外に行かないとたばこを吸えません。たばこは違法ではないので販売されています。個人の自由を会社が制限してよいのでしょうか。
喫煙者にとってはつらい時代でしょう。昭和のころは自席で喫煙していたくらいです。新幹線や飛行機の中でも座席で喫煙できました。今ではご存じのように受動喫煙が問題となり、いたるところで禁煙や分煙となっています。
2020年4月から、受動喫煙対策の強化で「改正健康増進法」が施行されます。会社にも適用され屋内禁煙となります。基準を満たす喫煙室があれば可となりますが、そこまで環境整備して喫煙を推奨する会社は少ないと思います。社長や役員が喫煙者でも、自ら我慢したほうがよいでしょう。刻々と喫煙環境は変わってきています。
「喫煙者はたばこ休憩をしているのに非喫煙者が休憩できないのは不公平だ」「喫煙者が戻って来ると臭くて気分が悪くなる」。筆者のもとにはこんな相談が寄せられています。
気分が悪くなったケースでは、申し出によって該当社員の座席配置をどうするかまで検討したそうです。世間的にも禁煙が勧められています。会社も配慮しなければ批判されます。結局、臭いの少ない加熱式たばこにすることで一旦は収まったようです。しかし、根本的な解決にはなっていないでしょう。
会社の場合、近隣からのクレームに対応する事態も生じます。筆者の顧客先での事案を含め実際に多数あります。具体的には「受動喫煙で健康を害するのに会社は近隣に配慮しないのか」「臭いが広がるので外でたばこを吸わせないでほしい」といった内容です。
敷地内全面禁煙の会社では、社員による昼休みの公園や空き地での喫煙が常態化し、クレームで近隣住民が訪問することもあります。ある会社では昼休みの喫煙については公共の喫煙場所や喫茶店などに行くよう指導しました。
単純に屋外で喫煙すればよいというものではなさそうです。
では、社内を全面禁煙にすることに問題はないのでしょうか。結論は「問題なし」です。社員には職務専念義務があり、むやみに離席しないように指導できるからです。
筆者も以前は「全面禁煙ではなく1日に2回ほどなら喫煙時間帯を認めてあげてはいかがでしょう」と話していました。しかし最近は状況が変わってきました。
改正健康増進法の施行により、会社では禁煙が原則という時代に突入したと思います。受動喫煙の問題は頻繁に報道されています。屋内禁止の法令施行に伴い、全面禁煙にしたほうがよいでしょう。
禁煙することで無用なトラブルも無くなります。そのことは喫煙者も理解しているはずです。社内で非喫煙者からのクレームも無くなります。たばこ休憩ばかりしている社員は労働時間が短くて得をしているという、賃金や労働時間に関する不公平感も同様です。
ちなみにたばこ休憩時間を給与から控除できるかと聞かれることがあります。これについては控除はできません。
いずれにせよ、社内を禁煙にすることで非喫煙社員や近隣の方々とのトラブルが無くなり、会社や職場での余計な労力を使わなくて済みます。改正健康増進法をきっかけに全面禁煙を検討する会社も増えてくるでしょう。質問者もつらいところですが、時代の変化を理解してもらえればと思います。
杉本 一裕=特定社会保険労務士/行政書士