2022/2/15 6:00 西日本新聞 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/876723/
2020年の改正健康増進法施行で屋内施設が原則禁煙となったことで、禁煙義務対象外の公園に喫煙者が集中し、子どもの健康被害への懸念が高まっている。厚生労働省は10年、「多数の人が利用する公共の場所は原則として全面禁煙」とした受動喫煙防止対策の基本方針を通知し、これを受けて公園を独自に禁煙化した自治体もある。だが、改正法は屋外の禁煙義務対象を学校や病院に限っており、通知に関わった関係者は「公園も対象として念頭に置いた方針が骨抜きにされた」と憤る。
10年2月に厚労省健康局長が出した通知は「屋外であっても子どもの利用が想定される公共的な空間では、受動喫煙防止の配慮が必要」と明記。この通知は、同省の「受動喫煙防止対策のあり方に関する検討会」が09年にまとめた報告書を踏まえて出された。
検討会メンバーで、国立がん研究センター元部長の望月友美子医師は「屋外での受動喫煙のリスクは許容可能な水準が設定しづらいからこそ全面禁煙が必要との議論になった。当然公園も含まれていた」と話す。
当時、通知作成に携わった元同省職員も「報告書は、公園など屋外も念頭に置いていた。通知もそれを踏まえた内容だった」と述べた。その頃から路上喫煙を禁止する自治体が増え、公園喫煙が既に問題化していたため、対策の必要性が生じていたと明かす。
東京都港区は14年、公園など屋外の「公共の場所」を禁煙とした。担当職員は「条例化に当たって通知は参考になった」と振り返る。兵庫県も20年、通知を踏まえて条例で公園を禁煙にした。
検討会メンバーで、静岡県立病院機構・地域医療支援監の加治正行医師は「たばこの健康への害は証明されていて、子どもに対しては特に悪影響が大きい。受動喫煙は一種の暴力とも言える。子どもや妊婦など不特定多数が利用する公園は本来、国が禁煙と決めるべきだ」と訴える。
同省や世界保健機関(WHO)でたばこ政策に携わった経験がある望月氏は「受動喫煙防止の政策は、たばこ産業の族議員の圧力によって骨抜きにされてきた歴史がある」と指摘。九州大の真崎義憲准教授(呼吸器内科)は「厚労省も受動喫煙防止の法改正を確実に進めるため、通知のトーンを弱めるのは苦渋の選択だったのではないか。政治が政策をゆがめないよう、国民の監視が必要だ」と話している。
現在の厚労省担当者は「通知は廃止ではないが、その後に改正法が施行されており、参照するのは不適切だ。現在、屋外の公共空間の禁煙方針はない」と説明。通知が骨抜きになったとの指摘に「受動喫煙の政策は通知以降、後退しておらず、圧力も承知していない」と否定している。
公園に喫煙者が集中している問題については「あなたの特命取材班」への投稿をきっかけに取材を続けています。1月4日に配信した関連記事はこちら。引き続き、ご意見や情報提供をお願いします。