2024年2月28日 NNA https://www.nna.jp/news/2629485
ニュージーランド(NZ)政府が、政権樹立から100日間に実施を目指す「100日行動計画」の追い込みに入った。期限の3月8日まで2週間となり、27日には2009年以降生まれを対象とする紙巻きたばこの喫煙禁止法の廃止法案を議会に提出。残りは16項目となっており、ラクソン首相は完遂に自信を示している。
NZヘラルドによると、前労働党政権が決めた喫煙禁止法の撤回を巡っては、保健専門家などが「政策の後退だ」と批判しているほか、有権者による支持は30%にとどまるとのデータも出ている。
ラクソン首相は「たばこ業界に迎合している」との批判を否定。労働党が法制化する前の法律では、10年間で喫煙率が17%から6.8%に低下していたと評価し、元の法律に戻すことで喫煙率を引き下げる計画だとした。
政府はほかに、先住民マオリの保健当局設立を廃止するための法案を提出。先住民マオリの権限を定めたとされるワイタンギ条約に基づいて設置されたワイタンギ審判所は、29日に同問題について審問を開く予定だったが、先手を打った形となった。
NZたばこ禁止、1年で幕 政権交代で方針一変
ケーシー・コステロ副保健相は記者会見で、保守連立政権は来年までに国民の喫煙率を5%未満にするという目標を掲げているが、前政権とは異なる方法を取る意向だと説明。だが、地元紙ニュージーランド・ヘラルドは、禁煙法の一部を維持するよう求める政府保健当局者の嘆願を、コステロ副保健相が拒否したと報じた。同副保健相が拒否したとされる提案には、たばこの購入可能年齢を18歳から25歳に引き上げるというものがあった。
同国の禁煙法は、ジャシンダ・アーダーン前首相率いる労働党政権の下で2022年12月に可決された。この野心的な法律には、たばこ製品を販売する店舗数を減らし、たばこ製品に含まれるニコチン濃度を下げ、2009年1月1日以降に生まれた国民へのたばこ製品の販売を全面的に禁止することなどが盛り込まれていた。2027年から毎年たばこ製品の購入可能年齢を引き上げることで、最終的な目標が達成されることになっていた。
ところが、昨年10月に行われた総選挙で勝利したラクソン首相率いる連立与党は、この法律が施行される前に廃止する方針を示していた。ラクソン政権は、同法を撤回すればたばこの販売から税収が入り、闇市場の創設も防ぐことができると主張。政府の試算によれば、同法を撤回することで、たばこ販売による年間約10億ニュージーランドドル(約910億円)の税収が保たれるという。現政権は、この法律によって死者数が激減し、国の医療制度が2040年までに約14億NZドル(約1300億円)節約することができるとの研究結果にも疑問を呈した。
今回の政府による禁煙法撤回の決定は、国内の保健関連団体から激しい批判を浴びている。首都ウェリントンに拠点を置く公衆衛生団体アオテアロアは、禁煙措置がたばこの闇取引を助長するという「ゾンビ論法」は誤りだと指摘。「善良な政府であれば、たばこの闇市場が拡大するかもしれないという脅威に対し、経験に基づいて支持されている禁煙措置を放棄しない」と訴えた。