《規制強化の動き》加熱式タバコユーザーのマナー問題 注意しても「におわないからいいじゃん」と開き直る人、タクシー車内で喫煙する人も

配信 NEWSポストセブン https://news.livedoor.com/article/detail/30195310/

 受動喫煙防止を目的とした改正健康増進法の全面施行から5年が経過したことを受けて始まった厚生労働省の審議会が、加熱式タバコの規制強化について検討し始めたことが話題になっている。現行法で紙巻と異なる扱いを受けているからと加熱式なら禁煙の対象外になると勝手に考えているマナーのなっていない喫煙者たちがいる。紙巻きタバコ喫煙者であるライターの宮添優氏が、一部の自分勝手な加熱式タバコ喫煙者たちによって生じているトラブルについてレポートする。

 *** 「悪いのは”紙巻き”だけ、という風潮があるので、加熱式であってもダメなんだ、という考え方が広まれば安心できる人は増えるのではないでしょうか?」

 加熱式タバコについても紙巻と同様の規制強化を国が検討しているとニュースを知り、東京・杉並区在住の主婦は自宅周辺の環境が改善されるのではないかと期待しているという。というのも、自宅の真横がタバコ店で、かつてそこに喫煙所があり「毎日のようにタバコの煙にいぶされていた」ほどだったからだ。その後、ちょうどコロナ禍の真っただ中の頃、「密になりやすい」という理由で喫煙所から灰皿が撤去され、大きく「喫煙不可」と書かれたポスターも張り出されたという。

「さすがにニオイもするし、喫煙ダメ、と書いたポスターの前で吸う人はいない。そう思っていました」(主婦)

 かつて喫煙所だったそのスペースから喫煙者は姿を消したが、それほど間をおかず、朝や昼、夕方や夜など、割と決まったタイミングで、少なくない人々が集うようになった。そして彼らは全員「加熱式タバコ」を吸いに、すでに閉鎖された喫煙所まで戻ってきていたのだ。

「出勤前の朝、昼休み後、退職後、飲み会の最中、という感じで、元喫煙所に加熱式タバコのユーザーだけが戻ってきてしまった。何度か注意しましたがのらりくらりとかわされるだけでなく”におわねーからいいじゃん”などと開き直られる。いやいや、吸わない人からすると、加熱式も紙巻も同じくらい不快なタバコのニオイがするんですよ」(前出の主婦)

 

勝手に車内で加熱式タバコ

 前述の元喫煙所で起きたようなトラブルは、今やほぼすべての車で禁煙が徹底されているはずのタクシー業界からも漏れ聞こえてくる。東京都内のタクシー会社幹部が説明する。

「以前は、タクシー運転手の喫煙率は高かったのですが、今や大手のほとんどが勤務中の乗務員の喫煙を認めていない。おかげで、車内からタバコくささが消えました。その代わり、ニオイがしないからいいだろうと、酒に酔ったお客さんが勝手に車内で加熱式タバコを吸われる例が増えています」(都内のタクシー会社幹部)

 もちろん客は、タクシーが全面禁煙であることは承知しているだろう。それでも「におわないからいいだろう」という勝手な理屈をつけ、乗務員にばれないとでも思っているのか、加熱式タバコの喫煙を始める客が増加傾向にあるという。

「加熱式タバコも相当にニオいますから、乗務員はすぐわかる。それで注意しても、客は『においが付くわけじゃない』と言って悪びれない。タバコをまったく吸わない人間にとって加熱式タバコの残り香は、紙巻タバコ同様に不快です。なかには、加熱式タバコ特有のニオイに比べたら紙巻タバコのほうがまだマシ、という人だっています。におわないと言い張っているのは、マナーを守れない喫煙者だけです」(都内のタクシー会社幹部)

 このような声が多数寄せられたのか、厚労省は「受動喫煙」に関する対策強化の方針を固めた。しかし、実質的には「加熱式タバコ」ユーザーへの締め付けであると、取材を続ける大手紙厚労省担当記者はいう。

「加熱式タバコユーザーによるマナー違反が多くなり、ついに国が動いたという格好です。加熱式タバコは紙巻タバコに比べてニオイが強くないという理由だけで、喫煙が認められていない公共の場所、電車内などでこっそり吸ってしまう人が後を絶たない。加熱式であっても、紙巻同等に他人に影響を及ぼしている、という実情の啓発です」(大手紙厚労省担当記者)

 2020年4月に全面施行された改正健康増進法によって、タバコは飲食店やホテルなどの屋内で原則、吸えなくなった。紙巻タバコの場合は、飲食ができない専用室でしか喫煙が認められない一方で、加熱式タバコについては経過観察として紙巻よりもゆるやかな対応となっている。その措置を勝手に「加熱式は健康被害がない」「加熱式はにおわない」と結論づけ、加熱式タバコ喫煙者は好きなときに好きなところで喫煙できると曲解して振る舞うユーザーが一部に出現しているのが現状だ。

 紙巻タバコユーザーの筆者だが、ニオイが付くのが嫌で、自家用車の中では禁煙を貫いている。が、ある日、加熱式タバコユーザーの知人を車に乗せたところ、黙って加熱式タバコを吸い始め、驚いたことがある。「紙じゃないからいいだろう」と知人は笑うが、紙巻タバコユーザーも、加熱式タバコのニオイには実はかなり敏感になっている。

 結局のところは、他人への「思いやり」や「配慮」の話なのだが、SNSなどでは紙巻タバコはダメ、加熱式はよいなどと、明後日の方向を向いたままの人々による、空虚な議論ばかりが続いている。今後の喫煙者の言動によって、タバコという嗜好品が社会的にどのような位置づけになるかかかっていると考えて、もっと建設的な意見で盛りあがりたいものだ。