妊娠中の母親の喫煙は青年期後期と成人期初期の重症喘息リスクを上昇

2021年 06月 17日 https://pulmonary.exblog.jp/29536649/?fbclid=IwAR3dmhvrpWpS9PKP24Y1aPM5Kvf3cJ2ijS61a9XBT1eZt9mwj1g8jb8VjHA

親が喫煙すると子供は喘息のリスクはかなり高くなります。たとえ母親が喫煙していなくても、父親が喫煙していればやはりリスクは上昇します(Thorax . 1997 Dec;52(12):1081-94.)。両親が喫煙していたら、もう地獄です。


3歳児健診の国内データによれば、ニコチン濃度が高くなる順番は、両親が喫煙者>母親が喫煙者>父親が喫煙者、です。理由は、母親のほうが父親よりも子供と接する物理的機会が多いためです。


妊娠中の母親が喫煙すると、生後まもなくから肺機能が低下することがわかっており、用量依存性の関係がみられます(Lancet . 1996 Oct 19;348(9034):1060-4.)。


紹介するのは、母親の喫煙の有害性を大規模なプログラムで証明した稀有な研究です。

Izadi N, et al. Factors Associated with Persistence of Severe Asthma from Late Adolescence to Early Adulthood. Am J Respir Crit Care Med . 2021 May 24. doi: 10.1164/rccm.202010-3763OC.

 

・概要

■小児の喘息の重症度は、一般的に軽度から始まるが、判然としない理由で進行し、そのまま重症に陥る場合がある。

■青年期後期~成人期初期の重症喘息の遷延を予測する、小児期の要因を特定することを試みた。

■The Childhood Asthma Management Programは、軽症~中等症の喘息を有する5〜12歳の1041人の小児を対象とした最大・最長の喘息の研究である。プログラムからの682人の参加者を、青年期後期(17〜19歳)および成人期初期(21〜23歳)の分析可能なデータで評価した。

■重症喘息は、ATSおよびNAEPPに基づいて定義された。変数減少法(指定した独立変数のうち従属変数に対して最も関連が弱く有意でない変数から順に削除)によるロジスティック回帰を用いて、重症喘息の持続を予測する臨床的特徴、バイオマーカー、肺機能を分析した。

■青年期後期と成人期初期に、12%と19%がそれぞれ重症の喘息を有していた。両期間で重症だったのは6%だった。小児期の気管支拡張薬投与後1秒率が5%減少するごとにオッズは2.36倍(95%信頼区間1.70-3.28, p<0.0001)、妊娠中の母親の喫煙によりオッズは3.17倍(95%信頼区間1.18-8.53, p=0.02)に増加した。

 

以前から言われていることですが、妊娠中の喫煙はやはり児の喘息の長期遷延をもたらすことは確定的と言えます。

妊娠中の喫煙は、子宮外妊娠・胎盤早期剥離など産科的救急疾患のリスクも増加させますし、子どもが肥満しやすいこととも関連します(低栄養環境に胎児が適応して倹約型になるかどうかは議論の余地があります)。

妊娠前に喫煙していても、早期に禁煙することで、児の体重や身長などへの影響が改善するとの報告もあるので、妊娠早期からの指導が重要です(Eur J Pediatr . 2010 Jun;169(6):741-8.)。禁煙により、SIDSの3分の1程度は防げるかもしれないという報告もあります(Rev Environ Health . Apr-Jun 2006;21(2):81-103.)。