受動喫煙対策「後退あり得ない」 経過措置、秋田県の判断は
秋田県の受動喫煙防止条例で小規模飲食店での屋内禁煙を努力義務にとどめた経過措置の延長案を巡り、県の判断に注目が集まっている。飲食業界は来年3月に終了する予定となっている経過措置を延長するよう要望しているが健康被害を懸念する声も根強い。経過措置の終了か、延長か。県の判断次第ではこれまでの受動喫煙対策が後退しかねない状況となっている。
「経過措置の3月での終了は難しい雰囲気になってきた」。10月、県議会棟で開かれた受動喫煙防止条例に関する検討委員会。審議の中盤、委員長を務める県医師会の三浦進一副会長は言った。
県が条例に関する意見聴取の場として設置した検討委は、保健医療や経済、飲食業などの関係者で構成する。この日は委員6人と事務局の県が出席し、議論を重ねた。
県飲食業生活衛生同業組合の齊藤育雄理事長は、新型コロナウイルス禍で準備が進んでいないことなどを理由に経過措置の延長を主張。委員の間でも飲食店側の意向を考慮する考えが多く、検討委は「延長を認める」との意見でまとまった。延長期間については3年や5年との案が出た。
「健康対策の後退はあり得ないことだが、委員長なので自分だけ延長を認めないわけにはいかなかった」。三浦副会長はそう振り返る。延長を容認する意見が大勢を占める中で「どこで妥協するか考え、延長期間の年限を設けることでまとめた」とした。
三浦副会長は、受動喫煙が肺がんや脳卒中などの発症リスクを高め、その影響で多くの人が死亡していると指摘。県条例について「5年前にせっかく良い条例ができたのに、こういう形で後退するとは思わなかった」とこぼす。
条例は、健康寿命日本一を目指して受動喫煙ゼロを掲げた県が制定し、2020年4月に規制がスタート。罰則はないものの、国の改正健康増進法よりも対策を厳しく定めた。
飲食店については原則屋内禁煙と規定。ただ、従業員のいる既存の小規模店は来年3月までの5年間は経過措置として屋内禁煙を努力義務にとどめ、喫煙できる余地を残した。県内の医療関係者からは当時、受動喫煙ゼロを掲げる中での5年は「甘すぎる」との声も出ていた。
経過措置が終了すれば、店内に喫煙専用室を設置しない限り喫煙はできなくなる。9月県議会の一般質問で、期間延長について問われた佐竹敬久知事は「条例に基づき既に措置を講じている飲食店の不公平感や、受動喫煙防止の機運の後退も懸念される」と述べ、慎重に検討する姿勢を示していた。
だが県議会でも、検討委と同様に延長を容認する動きが続く。
県議会は10月4日、各会派の議員の紹介で提出されていた請願を全会一致で採択。県議からは「コロナ禍の影響で、(禁煙化や喫煙専用室の設置という)対応が追い付いていないということなので延長はやむを得ない」との声が聞かれた。
県は、開会中の12月県議会内で一定の方針を示すとしている。
小規模飲食店喫煙巡り、6都府県は法上回る規制
県によると、既存の小規模飲食店での喫煙を巡っては、秋田、東京、大阪、埼玉、兵庫、岡山の6都府県が国の改正健康増進法を上回る独自規制を設けている。
大阪府は2019年3月に罰則付きの条例を制定。小規模飲食店については経過措置を設けたが、措置は予定通り来年3月で終了し、客席面積が30平方メートルを超える店は原則屋内禁煙となる。府によると、これまでに業界団体から経過措置の延長を求める公式要請はなかった。担当者は「スムーズな全面施行に向け周知してきた」と話す。
東京都では18年に罰則付きの条例が成立。従業員のいる飲食店は店舗面積にかかわらず原則屋内禁煙と定めた。
秋田県受動喫煙防止条例で、小規模飲食店に対する経過措置が終了した場合、喫煙専用室のない店舗では店外で喫煙する人が増える可能性がある。店外での喫煙について、県条例に独自の規制はないが、改正法は受動喫煙を生じさせないよう周囲の状況に配慮する義務があると定めている。
小規模飲食店での屋内禁煙、努力義務3年延長へ 秋田県方針、2月に条例改正案
2024年12月6日 秋田魁新報 https://www.sakigake.jp/news/article/20241206AK0002/
秋田県は5日、受動喫煙防止条例で小規模飲食店での屋内禁煙を努力義務にとどめた経過措置の終了期限を来年3月から3年延長する方針を明らかにした。新型コロナウイルス禍の影響で飲食店の対応が進んでいないことなどが理由。当初の予定通りに経過措置が終わらないことで、県がこれまで進めてきた受動喫煙対策の機運が後退する懸念もある。
方針はこの日開かれた12月県議会の福祉環境委員会で示した。今後はパブリックコメント(意見公募25/1/6まで)を実施した上で、2月県議会に条例改正案を提出したい考え。
県健康福祉部の高橋一也部長は委員会終了後、受動喫煙対策の機運が後退する懸念について「後退と受け取られる面はあるかもしれないが、飲食事業者には屋内禁煙にできるだけ早く対応してもらえるようにしたい」と話した。
条例改正案には経過措置延長のほか、対象店舗の管理者が、従業員の受動喫煙防止について延長期間内に早期に取り組むことを努力義務とする規定を加えるとした。
県は延長する理由として、保健医療や経済、飲食業などの有識者でつくる検討委員会で延長を求めたり、容認したりする意見が多かったことも挙げた。検討委は7、10月に開かれ、経過措置について「5年延長してほしい」「延長はやむを得ない」「コロナ禍を理由とするなら3年が妥当」などの意見が出た。また、県議会は経過措置の延長を求める請願を10月に全会一致で採択していた。
飲食店は原則屋内禁煙と定めた県条例の規制は2020年4月にスタート。従業員のいる既存の小規模店については、25年3月までは経過措置として屋内禁煙を努力義務にとどめ、喫煙の余地を残していた。経過措置が終了すれば、喫煙専用室を設置しない限り喫煙はできなくなる。