社説:受動喫煙対策 世界標準の規制が必要

2018年2月2日 9時47分 秋田魁新報 http://www.sakigake.jp/news/article/20180202AK0009/ 

 

 健康増進法改正に向け、厚生労働省は、新たな受動喫煙防止のための対策案を発表した。ファミリーレストランなどの大手チェーン店や新規開業の飲食店は原則禁煙としたほか、病院や学校、大学、官公庁は原則敷地内禁煙とし、喫煙専門室も認めないとした。

 一方で、焦点となっている既存飲食店の規制に関しては、一定の面積以下の場合に喫煙を例外的に認めるとしたものの具体的な面積は明示しなかった。「150平方メートル以下」を軸に自民党と最終調整しているとみられる。だが、150平方メートル以下ではほとんどの飲食店で喫煙可能となる。東京都内では飲食店の9割超が150平方メートル以下との調査結果がある。これでは受動喫煙対策の強化という目的は果たせなくなってしまう。実効性のある対策こそが求められる。

 厚労省が当初目指したのは東京五輪・パラリンピックが開催される2020年までに飲食店での受動喫煙をゼロにすることだった。受動喫煙が原因とみられる国内の推計死亡者数が年間1万5千人に上る中、昨年策定した第3期がん対策推進基本計画(17~22年度)では「受動喫煙ゼロ」の目標を盛り込むことも検討した。

 だが、「たばこを吸う権利」を掲げ、分煙を主張する自民党の抵抗に遭い、軌道修正。健康増進法改正を巡っても、厚労省側が例外的に小規模飲食店の喫煙を認める案を示した。

 ただし、塩崎恭久前厚労相は例外対象店舗の面積を30平方メートル以下と主張し続け、150平方メートル以下とする自民と平行線をたどった。昨年8月の内閣改造で塩崎氏が退任した後、自民党案の150平方メートル以下の方向へ一気に進んだ。

 世界保健機関(WHO)は加盟国の日本に「たばこのない五輪」を求めている。海外では既に約50カ国が職場や飲食店など、公共の場での屋内喫煙を法律で禁止している。喫煙できる店舗が仮に30平方メートル以下だとしても世界標準からは大きく後れを取る。ましてや150平方メートル以下となれば対策自体が骨抜きとなり、「世界最低レベル」の状況は改善されないままだ。「たばこのない五輪」は遠のく。

 規制に後ろ向きな自民党のこれまでの動きは、党のたばこ議員連盟の存在が大きいだろう。受動喫煙の危険性が世界的に認知される中、日本が対策を軽視するような独自路線を歩もうとする理由は一体何なのか。国民の健康を第一に考えるのが政権政党の責任であり、理解に苦しむ。一方的に飲食業界や愛煙家の側に立つかのような姿勢には疑問を持たざるを得ない。

 健康増進法改正案は来月にも国会に提出される。安倍晋三首相は通常国会の施政方針演説で「東京五輪・パラリンピックを目指し、受動喫煙防止対策を徹底します」と言明したばかり。それを実現するには対策を世界標準に近づける努力が必要だ。