「反対派の死ね、死ねファクス一晩中」 重鎮キレて推進派が反撃 「次の選挙落とすぞと脅せ」 それでも受動喫煙対策は煙の中

2017.4.9 01:00  sankei.com  http://www.sankei.com/life/news/170409/lif1704090004-n1.html

 

 受動喫煙対策をめぐる自民党内の議論で、これまで規制強化に慎重な“分煙推進派”に押され気味だった“禁煙派”がついに反撃ののろしを上げた。党受動喫煙防止議連は3月下旬に総会を開き、政府に対策の徹底を求める決議を採択。出席議員は「(厚労省案に)反対の人たちに負けないように声を上げていこう」と“宣戦布告”した。分煙派もすでに厚労省案への対案を公表しており、党内議論はさらに混迷を深めそうだ。安倍晋三首相もこうした足下の現状に頭を悩ませており、政府がもくろむ今国会での関連法案成立は予断を許さない状況だ。

 受動喫煙防止議連が採択した決議では、飲食店を原則、建物内禁煙(喫煙室設置可)とする厚労省案を「国際的に見ても恥ずかしくない最低限守るべきレベルの対策」とし「これ以上規制を緩和した案としないこと」を求めた。

 さらにバーやスナックなどお酒を提供する小規模店舗を規制の例外とする場合は「解釈によっていたずらに対象が広がらないよう、要件を明確化すること」とくぎを刺した。法案を速やかに今国会に提出し「受動喫煙のない環境の実現に向けて全力を尽くすこと」も要請している。

 決議を採択した先月の総会には47人の議員が出席した。3月はじめの同議連の臨時総会への出席がわずか10人だったのに比べると、会場の熱気は雲泥の差だった。

 

 会場の熱気をさらにヒートアップさせたのは厚労族の重鎮、尾辻秀久元厚労相だ。尾辻氏は総会で「これまで部会をやるたびに規制に反対の人たちが動員をかけてすごい数になっていた。今まで9対1で圧倒的に部会の意見は反対だった」とこれまでなめてきた苦汁を振り返った。その上で「今度はぜひ(部会に)来てもらいたい。そしてあの反対の人たちの9割に負けないように発言していただかないと。政治は力。力は数だ」と居並ぶ議員にハッパをかけた。

 さらに尾辻氏は総会に出席していた日本医師会など業界団体にも過激なげきを飛ばした。「皆さんはあまりにも紳士的すぎる。私のところには反対派から『死ね、死ね、死ね』というファクスが一晩中流れてくる。はっきりいって次の選挙で落とすぞというくらい脅しをかけなければ(議員は)何の役にも立たない」

 総会後、議連会長の山東昭子元参院副議長は「やはりこの辺から正論を主張していかなければいけない。受動喫煙防止の気概を持った議員がどしどし発言をして積極的にそうした空気をつくっていく」と満足そうに語った。医師で議連事務局長の古川俊治参院議員も「政府案とスタンスが同じであれば意見を言わなくても、成案になっていくので必要性がなかったが、ここまで反対にあうということになると、われわれ側も意見を強くしていかなければいけない」と力を込めた。

 

 相対する分煙派の党たばこ議連(会長・野田毅前党税制調査会長)は3月上旬の臨時総会で、飲食店について「禁煙」「分煙」「喫煙」の表示を義務化するという対案をまとめた。

 愛煙家のベテラン議員は、禁煙派の盛り返しに対して「望むところだ。受動喫煙対策は国際的な潮流というが、むしろ国内世論はわれわれを支持している」と余裕を見せる。

 実際、産経新聞社とFNNの合同世論調査では、厚労省案がよいと回答した人は37・6%だったのに対し、たばこ議連の対案を支持する人は60・3%に達した。(⇒これは正しくない 日本禁煙学会: 産経/FNN合同世論調査」へ)

 禁煙派と分煙派の対立が激化する中、直接対決の場となる厚労部会は2月15日以来開かれておらず、開催のめども立っていない。 

 こうした状況に安倍晋三首相の胸中も複雑だ。安倍首相は3月24日の参院予算委員会で、厚労省案とたばこ議連の対案について「今、私がどちらがよいという段階ではない」と述べ、当面は政府与党内での議論を見守っていく考えを示した。

 さらに「どちらの案が受動喫煙対策に実効性があると思うか」と問われると首相は「答えるのはなかなか難しい。どうか今の段階で私に評価を求めるのは何とかご勘弁いただきたい」と正直な心情を吐露。「最終的には議論が収斂していく中で私も判断したいと思うが、私の判断を待たずに収斂していただければいいと思っている」とも語った。

 政府は2020年の東京五輪・パラリンピックを見据え、今国会での法案成立を目指しているが、党内で分煙派と禁煙派が神経戦を繰り広げている現状では意見集約にはほど遠い。法案提出の行方はいまだ煙の中だ。