大阪市路上喫煙全面禁止めぐり異例の賛否拮抗 噴出した反対派の切実事情

 

産経新聞

 https://www.sankei.com/article/20231218-7MS6GTFHE5INHOKPI7KIKRPBHQ/

 

大阪市が2025年大阪・関西万博直前の令和7年1月から実施を検討している市内全域の路上喫煙禁止。

これに伴う条例改正に向けたパブリックコメント(意見募集)の結果、「賛成」と「反対」が拮抗(きっこう)した。受動喫煙などが問題化する中、賛否が拮抗するのは異例で、大阪市民の喫煙率が全国平均を上回っていることや、新たな規制で影響を受けかねない飲食業界からの反発が背景にあるようだ。

分煙環境の必要性

大阪市は一部地域で導入している路上喫煙禁止の対象地域を市全域に広げるため、条例の改正を目指しており、市民の意見を聞くため今年8月7日~9月6日にパブリックコメントを実施。延べ545件の意見が寄せられ、市は11月30日に結果を公表した。

路上喫煙の全面禁止について「賛成」が69件。中には、市が路上喫煙者から徴収する千円の過料では「極めて不十分」とする意見も6件あった。一方、「反対」は88件。このうち「喫煙者の自由を奪う」などとして憲法違反を指摘する意見が10件あった。

たばこ業界関係者は今回の結果を「受動喫煙への批判が高まる中、他の自治体で同様のパブリックコメントを行えば、禁止に賛成する意見が多くなりやすく、大阪市のように賛否が拮抗するのは珍しい」とする。市民の4年の喫煙率は17・7%で全国平均の16・1%を上回っており、そうした背景も結果に影響した可能性がある。

回答では賛成、反対とは別に「条件付きでの賛成」も27件あった。この条件とは公衆の喫煙所の整備だ。こうした分煙環境の必要性を指摘する声は賛成派、反対派の双方に見られ、「禁止するだけでなく喫煙環境を整備し周知することが重要」(賛成派17件)、「まずは喫煙所の整備を行うべきだ」(反対派11件)との意見が出た。

「120カ所で足りる?」

分煙環境の整備が課題として認識される中、市は指定喫煙所120カ所を新設するほか、既存の喫煙所を指定するために20カ所を改修することを計画。市による公設と、民間事業者らへの補助金による民設で整備を進めている。

ただ、12月15日時点で整備の手続きが始まっているのは公設で6カ所、民設で28カ所、改修8カ所と計画の3割にとどまる。そもそも、すでに路上喫煙全面禁止の東京都千代田区では、公衆喫煙所の整備を区域11・6平方キロメートルに100カ所を目標とし、約80カ所まで整備。大阪市域は225・2平方キロメートルで、面積に対する市の整備計画数に疑問の声も目立つ。

今月8日に市議会で開催された委員会では、市内の商店街や業界団体が整備計画数の上方修正などを求める陳情書について議論した。ある委員は市側に「120カ所で足りるのか」と指摘。全面禁止まで1年あまりとなる中、「整備が間に合うのか」といった進捗(しんちょく)を不安視する声も上がった。

私有地の灰皿も

パブリックコメントの質問のうち、反対(78件)が賛成(13件)を大きく上回ったのが、道路に面する私有地などに設置された灰皿の撤去に関する努力義務規定だ。市は店先の灰皿などを想定し、喫煙者が私有地から道路に出て路上喫煙をするおそれがある場合、灰皿の移設や撤去などを依頼するとしている。

この努力義務に反発しているのが、飲食店経営者約2700人が加盟する「大阪府飲食業生活衛生同業組合」(大阪市中央区)だ。

府内では万博開幕直前となる7年4月1日から、国の健康増進法より厳しい府受動喫煙防止条例で、店内で喫煙できる客席の面積が100平方メートル以下から30平方メートル以下に引き下げられる禁煙になる小規模店は店内に分煙スペースを設けることが難しく、喫煙者の客をつなぎとめるためには店先に灰皿を置くことになる

同組合の中村実事務局長は「新型コロナ禍で打撃を受けた飲食店にとって、喫煙者の客離れは追い打ちとなる」とした上で、「近くに喫煙所があれば店先に灰皿は必要ないが、120カ所ではカバーしきれない。市は喫煙所の整備計画数を増やすべきだ」と訴えている。