小規模飲食店 禁煙対策努力義務に 岡山県が独自条例骨子案

2019年11月21日 22時34分 山陽新聞 https://www.sanyonews.jp/article/960406/

 

 岡山県は21日、受動喫煙対策の強化に向けて来夏までの策定を目指している県独自条例の骨子案を明らかにした。来年4月に全面施行される改正健康増進法では喫煙が認められている小規模飲食店について、従業員を雇っている場合は対策を講じるよう努力義務規定を盛り込んだ。

 小規模飲食店は、個人または中小企業が経営する客室面積100平方メートル以下の店舗。改正法では従業員の健康被害が懸念されるとして、県条例では禁煙と喫煙のエリアを仕切るよう上乗せ規制を行う。ただし、努力義務のため違反しても罰則はない。

 このほかの施設に関しては特に規定を設けず、改正法の通り、学校園や病院は敷地内、宿泊施設などは建物内がそれぞれ罰則(過料)付きで原則禁煙となる。

 県によると、全国の自治体でも独自条例を制定する動きがあり、中でも東京都は東京五輪・パラリンピックに向け、小規模飲食店でも従業員がいれば客室面積にかかわらず罰則(過料)付きで原則屋内禁煙とするなど厳しい規制を敷いている。

 県条例を巡っては、県医師会などでつくる県受動喫煙防止推進協議会が9月、約3万6千人分の署名を添え、制定を求める要望書を県と県議会に提出。県は10月から医療関係者や大学教授らを交えた会合を3回開き、意見を聞いた。県は今後、条例案をまとめ、パブリックコメント(意見公募)を行うことにしている。

 この日、会見した伊原木隆太知事は「ほかにも(規制)できるかもしれないが、幅広いコンセンサスを得るという観点で考えた。県民がきちんと合意した条例にしたい」と述べた。

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 受動喫煙対策を強化する県条例の骨子案が示された21日、非喫煙者や子どものいる家庭などからは歓迎する声が上がる一方、規制対象となる小規模飲食店の関係者からは経営への影響に対する不安が寄せられた。踏み込んだ規制を求めてきた医療関係者からは骨子案への不満が聞かれた。

 「接客中にたばこの煙を我慢することがあったので助かる」と喜ぶのは、飲食店でアルバイトする岡山大4年の女子学生(23)。3歳の長男がいる岡山市の主婦(42)は「条例を機に禁煙に踏み切る飲食店が増えればうれしい」と期待しつつ、「規制によって屋内で吸えなくなると公園や路上で吸う人が増えないか心配」とも打ち明ける。

 県内の飲食店など約70店舗が加盟する県喫茶飲食生活衛生同業組合の宮地和徳理事長は「努力義務でも従わざるを得ない印象がある。経営者には喫煙者の客離れによる売り上げの落ち込みなどを懸念する声もある」と不安を口にする。

 健康被害を防ぐため、飲食店の全面禁煙化などを要望してきた県受動喫煙防止推進協議会の代表世話人を務める清水信義・県医師会副会長は「対策は不十分で、非常に残念と言わざるを得ない。従業員を雇わない店は喫煙可能なままになっており、これでは受動喫煙を防げる環境は整わない。県に見直しを求めていきたい」とした。