(H29.6.20(火)11:01 ~ 11:22 省内会見室) http://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/0000168517.html
(大臣)
おはようございます。前回の記者会見のときにも申しあげましたが、受動喫煙防止対策徹底に関する談話を、まず私のほうから申しあげたいと思います。私のほうから読み上げさせていただきたいと思います。
受動喫煙対策の徹底に関する談話。
本年1月の内閣総理大臣施政方針演説で、「受動喫煙対策の徹底」を行う明確な姿勢の表明がありました。
受動喫煙の防止については、これまで我が国は、平成15年以降14年もの間、健康増進法に基づき、施設の管理者に受動喫煙防止の「努力義務」を設け、自主的な取組み を推進してきました。しかしながら、たばこを吸わない人が8割を超えているにもかかわらず、未だに多くの国民が飲食店や職場等の「公衆の集まる場」において深刻な受動喫煙の被害に遭っています。
国民全体の健康に責任を負っている厚生労働省としては、「全ての国民の命を守り、子どもたちの未来を守る」ため、「原則屋内禁煙の実現」を最優先課題の一つと位置づけ、第193回国会(常会)での法案提出に向け、検討を進めてまいりました。
これまでの議論を通じ、「望まない受動喫煙をなくす」という法案の目的をはじめ、多くの点では関係者の意見の一致をみることができました。その一方で、受動喫煙被害の最大の現場となっている飲食店の取扱については、前提となる客観データに関する周知不足やこれらエビデンスに基づく議論が十分できず、国民の多くが成立を望んでいた法案の中身につき、残念ながら結論に至っていません。
厚生労働省としては、この度の法案協議過程の議論及び報道等を通じて、受動喫煙対策の必要性及び重要性につき国民的な理解が深まったことは、公衆衛生の観点からは大きな進展と捉えています。今後、できるだけ早期の法案提出に向けて、以下に掲げるような受動喫煙対策の必要性を巡る科学的データや海外での実例等につき、飲食店団体その他の法案関係者への一層の周知に努め、理解を求めていく考えです。
・国立がん研究センターの発表によれば、受動喫煙を受けなければ亡くならずに済んだ方 は、国内で少なくとも年間約1万5千人とされています。
・厚生労働科学研究班の推計によれば、受動喫煙による超過医療費は年3,000億円以上とされています。
・国民健康・栄養調査によれば、非喫煙者が受動喫煙被害に遭遇する機会として一番多いのは飲食店です。
・世界保健機関(WHO)によれば、間仕切りやエリア分けなどによる多くの「分煙」措置は、受動喫煙被害の防止効果が乏しいことが、様々な研究で明らかとされています。
・世界保健機関(WHO)と米国国立がん研究所が共同でまとめた報告書によれば、受動喫煙防止政策によりバーやレストランなどサービス業部門に負の影響は与えないことが示されています。また、愛知県や大阪府の調査でも、自主的に全面禁煙にした店舗のほとんどで経営に影響がなかったことが示されています。
・屋内での対策以前に、国内では「屋外(路上)での喫煙が規制されている」との御意見もありますが、全国1,741の市町村のうち、路上喫煙を何らかの形で規制する条例があるのは243(全体の14%)に留まり、条例の具体的な内容を見ると、私有地を含めた屋外でまったく喫煙ができないという自治体はありません。
・2010年のWHOとIOCによる「たばこのないオリンピック」の合意以降、全ての開催国(英国、ロシア、ブラジル、韓国)では、国レベルで、飲食店を含む「公衆の集まる場」で罰則付きの法制度が導入されています。
なお、一定規模以下の飲食店については「原則屋内禁煙」の例外措置として、「喫煙店」であることの表示義務や、「未成年者を立ち入り禁止とする」という義務を課 すことにより、喫煙専用室がなくても喫煙可能とするべきという意見があります。
厚生労働省としては、こうした例外措置の導入を全面的に否定するものではありません。しかし、かかる施策の受動喫煙防止効果はあくまで限定的なものであることから、広範な例外措置を恒久的に認めることは受動喫煙被害を助長・容認する結果となりかねません。したがって、例外措置を認めるとしても、あくまで小規模飲食店を対象とし、かつ、時限を明確にした激変緩和措置としての位置づけとすべきであるとの立場です。
受動喫煙に伴う深刻な健康被害の実態は、世界的にも科学的に証明されています。したがって、感染症対策など他の社会的規制同様に、あくまで科学的・客観的な視座に基づいた議論を基軸に対策の在り方も検討されなければなりません。喫煙者の方々も、飲食店営業者の方々も、「望まない受動喫煙をなくす」という法案の趣旨自体に 反対される方は多くありません。厚生労働省としては、これら受動喫煙対策に関わる関係者の皆様の不安や心配に真摯に向き合い、安心してご協力頂ける環境を整えていく努力を続けてまいります。
2020年のオリンピック・パラリンピック競技大会は我が国で開催されます。過去の開催国が大事に紡いできた「たばこのないオリンピック・パラリンピック」という伝統を継承する責任があります。海外から訪れる多くの観光客を気持ちよく「おもてなし」する責任があります。厚生労働省としては、国民の健康を第一に、世界に恥じない受動喫煙対策の法案をできるだけ早期に提出すべく、引き続き全力で取り組んでまいります。
以上が私どもからの談話でございます。
(記者)
談話に関連してお伺いしたいのですが、これまで大臣がおっしゃられたことを改めて今回談話にまとめられたということかと思うんですけれども、自民党のほうは例外措置を恒久的にということで、そこがなかなか折り合いがつかなかったのかと思いますが、今後自民党のスタンスというのはなかなか変わらないと想定されるわけですが、そこをどうやって説明していくのでしょうか。
(大臣)
改めて最近2012年にロンドンのオリンピックがありましたが、イギリスはパブというものが大変人気で金曜の午後、平日も5時近くになるといっぱいになるくらいパブの人気がありました。
これはかつては、モクモクの中でビールを飲むという、何を飲んでいるのか分からないときもあるくらいモクモクだったそうですが、確か2010年に最終的な法律にしたのでしょうか、いずれにしても禁煙措置を建物内完全禁煙ということで決めましたが、そこに至るまでは大議論があって、テレビのチャンネルをどれに合わせてもパブを中心としたタバコを吸わせるべきか、吸わせないべきかの議論があったと聞いております。
相当な議論があって最終的にはああいう形で建物内完全禁煙ということでオリンピックを迎えることになって、だいたい2年前にそれがやられることになったと聞いておりますが、そういうように私どもとしても自民党とも国民に開かれた徹底的な議論が出来たら良かったなと今回振り返ってみまして、思うわけであります。
私も部会に1回行っただけで、12分間お話をさせて頂きましたが、それ以上のやりとりも質疑も何もできなかったわけであります。
政治家はやはり国民に対して、責任を負っておりますので、この議論の中で、私もずいぶんこの過程のなかで学ばさせていただきました。
そういう意味で徹底した議論を国民に開かれたかたちで行うということが大事で、次期国会に向けては先ほど申しあげたように、飲食店などの不安を取り除くように丁寧に説明を尽くす、そして安心して協力いただけるような環境を整えなければならないと思っております。
しかし、先ほど申しあげたとおり、受動喫煙の被害というのは科学で立証されている事実で、感染症予防法同様、政治的な妥協をするということはないわけで、一定の科学的な根拠のあることは、きっちりとやらなければならない、もちろん政治的に配慮すべきところは周辺にあるかもしれませんが、肝の部分はやはり科学的に対応していかなければならないだろう。
それが、がん患者の皆さんが働いていたり、あるいはお客様で自分の意思で来ているわけではない場合も、妊娠をしている女性が受動喫煙に遭ってしまう、あるいはそれを通じて胎児にも影響が出るということは委員会の審議の中でも出て、質疑の中でも示されていたわけでありますので、こういうようなかたちで私どもは丁寧に説明をしながら、オープンな議論を自民党の皆さん方ともしっかりとやることが大事なので、いま国会が閉会になっていますので、どういう場が近々あるかは別にして、時節機会を捉えて、そういう話し合いの場を多く設けていかなければ国民的な議論が深まらないと思います。
それについての理解を求めることを続けてまいりたいと思いますし、できるだけ早期に成案を得て次の国会に提出を確実にして、オリンピック・パラリンピックに間に合うようにさせるということが私ども厚生労働省として大事なことだと思います。
(記者)
重ねてお伺いします。できるだけ早期に次の国会ということですけれども、一部報道で内閣改造がその間に予想されるという話も出ていますが、スケジュール感としては、改造の前なのか後なのかというのはどのようにお考えでしょうか。
(大臣)
改造のことは総理に聞いて頂かないと分かりませんので後も前も分かりません。
(記者)
オープンな議論とおっしゃいましたが、自民党の厚労部会などでは記者が入れずにクローズで議論されたりもありますが、このたばこに関しては、そういう部会や会議の場に報道陣も入れたオープンな場で議論をしていただけるということでよろしいでしょうか。
(大臣)
党の会合のやり方については、党がお決めになることで私ども政府側が注文をつけるようなことではありませんが、大事なことは国民にもちゃんと届く議論が大事だと申しあげているので、国民の代表たる国会議員が集まっているのが党でありますから、オープンな議論をどうやるかは党がお決め頂くということであります。
国民の皆さん方と一緒に考える。一番思っているのは飲食店の皆さんであり、たばこを販売されている方々であり、あるいはたばこを耕作している方々でありますから、こういった方々にも正しい情報が届くということが大事なので、そういった方々と勿論逆に被害を受けている8割以上のたばこを吸わない方々にも正確な情報が伝わるということが大事なので、そういう議論を期待したいということを申しあげているのであります。
(記者)
オリンピック・パラリンピックということが強調されていますけれども、以前にラグビーのワールドカップまでにという話もありましたが、五輪に間に合えばという考えの修正があるということですか。
(大臣)
オリンピック・パラリンピックというのは、ワールドカップも含めての気持ちで言っているので、当然、前の年にワールドカップで世界から集まってくる、ワールドカップとオリパラを合わせると15都道府県で競技が行われます。
それらにどこに行っても、それ以外のところも当然旅をされる。IOCとWHOの合意というのは、国全体での禁煙措置をということを言われているので、私どもとしては、勿論ワールドカップに間に合うように努力をしていきたいと思います。
(記者)
ラグビーワールドカップとオリパラの話がありましたけれども、時限を明確にした激変緩和措置を厚労省として考えているわけでありまして、そうすると数年間ということになりますけれども、結局オリパラには厚労省案では間に合わないのではないかと思います。
大臣の談話のまま通常国会に提出されたとしても、間に合わないことになると、その辺りは国際社会にどのように説明していくのでしょうか。
(大臣)
我々には基本的な考え方の案という名称になっている厚生労働省案がありますので、元々それを中心に考えておりますので、まったくこの例外を、あるいは激変緩和をしないと言っているわけではないことを申しあげているので、基本的な考え方の案で参りたいというのが私たちの基本スタンスであります。
(記者)
オープンな議論というところで、自民党の部会の話が先ほど出ましたけれども、大臣としては自民党の厚生労働部会にとらわれずに、いわゆる患者団体の方やあるいは飲食店団体の方も交えて、もう少し幅広い形の議論の場を厚生労働省としてセッティングしたり等そのようなことも幅広に含めて考えていらっしゃるということでしょうか。
(大臣)
私どもは元々5月15日の部会の際に、是非まだ厚生労働部会ではお呼びになっていない患者団体も呼んでいただくとよろしいのではないのでしょうかという提案はいたしました。
提案をいたしましたが、あのような形でございましたので、今回特にがん患者の働く人たちが焦点の一つになりましたし、もちろんそれ以外の病気の方々が大臣室にたくさん来られました。
また、働き方改革をやってみて、病気と闘いながらしかし仕事をいっぱいいっぱいやっていらっしゃる方々も実はたくさんおられるということも同時に分かりました。
従いまして、産業医制度の在り方も今回、法改正も視野に入れながら検討したわけでありますので、そのようなあらゆる関係する方々や、大変受動喫煙を深刻に考えていらっしゃる方々も御一緒に議論に加わっていただくということが大事でありますし、また国民の代表たる国会議員はあらゆる立場の人の御意見を聞くことを心して努力しているわけであります。
そのような形になるような議論が党を中心に出来ると私はよろしいのではないかということを希望するわけであります。
(記者)
自民党案では、150平米という50平米が厨房で100平米が客席という案でしたが、客席が100平米という考え方でありますが、150平米という広さが小規模と考えるのかどうかということが一点と、もう一点はこの談話には業態を分ける分けないということが書いておりませんが、自民党案は業態をひととくくりにしてということですが、厚生労働省案では食堂やラーメン店や居酒屋やバーと分けております。
バーとスナックが小規模店ということですが、もちろん食堂やラーメンでも小規模な店はあるので、業態を分けておりますが、自民党案は業態を分けておりません。これについて業態をどのようにお考えでしょうか。
(大臣)
それは先ほどの談話で私が申し上げたとおり、まず小規模の点でありますが広範な例外措置を恒久的に認めることが、受動喫煙被害を助長や容認する結果となりかねないということを申し上げているところでありまして、一定規模以下という際に正式に言われているわけではございませんが、報道を通じているものでいけば委員会審議でも明らかになったように、客席面積100平米以下だと東京の場合は85.7パーセントが入ってしまうということで、例外と原則が逆転するようなことを恒久的にやるということであればこれは難しいのではないのだろうかということを申しあげているわけであります。
この例外を考えるというならば、まず激変緩和的時限であるのかどうかということも大事でありますが、どの程度を例外とするのかということも良く考えなければいけないと思います。業態の話がございましたが、韓国はお酒を中心に出すバーは全て喫煙可となっておりまして、それ以外は中小といえども飲食店を含めて全て原則屋内禁煙となっております。
従って、オリンピック開催国で飲食店の中でもお酒を中心とするところ以外で例外を認めるということになれば、正式なIOCとWHOの合意の後のオリンピックとしては、米国そしてロシアやブラジルそして韓国、その次に日本がくるわけで、そこで初めてこれまでの伝統を日本がやぶることについてどう考えるのかということも御一緒に皆で考えていかなければいけないのではないかということも申しあげているところであります。