塩崎恭久・厚労相に聞く(全文2)受動喫煙対策で日本の評価決まりかねない

2017.07.05 11:02 The PAGE https://thepage.jp/detail/20170704-00000004-wordleaf 

 

 通常国会で法案提出が見送られた受動喫煙対策。厳格に屋内原則禁煙を打ち出す厚生労働省と、一定面積以下の飲食店は禁煙の規制対象外としたい自民党の交渉が決裂したためだ。提出に至らなかったことについて「塩崎恭久厚生労働相が意見を曲げなかったため」などの報道が相次いだ。THE PAGEは塩崎厚労相にインタビューし、受動喫煙対策について譲れない思いを聞いた。

自民党の議論 どう見るか

 ──自民党の議員から、「がん患者は働かなくていい」という発言があり問題になった。自民党内の議論というのが、海外では禁煙が飲食店の客離れにはつながっていないなど、前提となる事実を客観視せずに感情的な議論というのが展開されているようにも感じてしまう。

 私は、厚生労働省の案を、5月15日に1回だけ私自身から(自民党の部会で)説明しました。3月1日にできた案なんですね。去年の10月には、飲食店すべてを禁煙とする案をつくっていた。それで、私は皆さんに説明をさせてくださいと。オリンピック開催国で、たばこを吸えるような飲食店を許しているところは一つもないんだということも説明をさせてもらいたいということだった。普通は、お役所の人が説明するのですけれども、私は自ら行って説明しました。

 そのとき私との議論じゃなくて、議員が発言する中で、例のがん患者は働かなくていいというやじが飛び出して騒ぎになりました。

 私どもは、自民党も一緒に、政府、政府与党一体となって働き方改革をやりました。そのときに、がんの患者の方々も、たくさん実は、人知れず働いていらっしゃるということがわかりました。生稲晃子さんがメンバーに、(働き方改革)実現会議におられましたが、それ以外にもやっぱりたくさんいる。ここにも、随分たばこの問題でがん患者の方々は来られました。その方々は、本当に受動喫煙に敏感で、例えば、空港の喫煙ルームは、例えば、私の地元の松山の空港の喫煙ルームは陰圧になっていないからだめだということを私は初めてがん患者の方から聞いて、あ、そこまで心配されているんだな、つまり陰圧でないと、ドア開けたらふわっと煙が出てきちゃう、陰圧だと中にしか空気が入らないと、こういうことでありまして。

 そういうことで、自民党の中の議論は、ちょっと時間切れで終わってしまいましたが、できたら、私はもっと粘り強く何度でも、わかっていただけるまで、どんなに怒られても何しても説明を重ねさせていただけたら、もう少し議論が前向いて進んだのかなと。
 
 だから、たばこを(喫煙店であるという)表示だけで吸えるようにしたらいいじゃないかという方は、じゃあ、オリンピックどうやって迎えるんですかということについての代案をぜひお示しをいただいて。

 海外の方も来られて、海外の方は多分ホテル等飲食店、それも飲み屋さんじゃなくて普通のところで、日本の食を楽しみたいという人たちが多いと思うのです。したがって、もうホテルは大体(原則屋内禁煙が)徹底されていますから、そうすると、飲食店をどうするかということで。海外から来た方々は1日3食食べますから、(屋内禁煙でないという点が)やはり(日本の)評価を決めてしまうと思うので、やっぱりそこのところもじっくり議論をさせていただけたらなと思います。

飲食店など現場の声を自ら聞きに行っている

 ──今後臨時国会に向けて議論していくことになる。厳し過ぎるという喫煙者や、小規模飲食店に、どう説明していくか。今回、議論がクローズだった部分もあったが、オープンな議論の場などは考えているか

 党の会合というのは党が開くので、政府が開くわけじゃないから、党がどうお決めになるかということにかかってくるのですが、やはりオープンな国民に開かれた議論をしないと、これは国民に開かれた飲食店のお話なので、そこのところはとても大事だと思うのです。ご指摘のように。

 したがって、私も実は、5月に、生活衛生同業組合の飲食店を含めて、さまざまなお客さん、例えば、お風呂屋さんとか、床屋さんとか、パーマ屋さんとか、いろいろ生活衛生同業組合には種類がありますが、その中の代表者に集まってもらって、私からお話に行きました、(現状を)聞かせてもらいに。

 いろんな意見を聞きました。そこでおっしゃっていたのは、やはり飲食店の方々はかなり分煙でやらせてほしいということをおっしゃるんですが、科学的に本当に分煙になっているということが大事だと思っています。それもお伝えはしましたが、方向としては、禁煙の方向に行くんだろうなというのは世の中の動きとしてはご理解をされていました。

 お風呂屋さんは、もう中では吸えないという形にして10年ぐらい経つそうです。ただ、10年ということは、少し時間がかかるので、時間をいただきたいということは言われました。そのことを踏まえて、実はこの間、党との話し合いでも例外は、時間を少しかけても、激変緩和的には、政治的には考えていいんじゃないか。それから、経済的に負担がかかる、喫煙ルームを設置する際の負担をどうするかとか。そういうようなことを含めて、色々考えればいいんだろうというふうに思います。

 望まない受動喫煙をなくすということをお互い認め合っているわけですから、そのことも科学的に考えたときに、本当に何がいいのかということを一緒に考えていただかないといけないのかなというように思います。

 今むしろオープンな場ではなくて、どういうふうに、お店でも禁煙にしてきたかということを聞きつつあります。やはりいろいろな合わせ技を皆さんやっていらっしゃって、お客様でやっぱり納得されない方もおられるというケースもあるようだし、従業員の中で、むしろ吸いたいという人がいたりするときもあるそうで、そういう対策をどうするか。お客様にどこか外で吸えるような場所を、ちゃんと周りが汚れないようにするように用意するとか、いろんなことをやっておられるようですので、そんなことも今聞きつつあるところです。

 ──今、聞きつつある、意見を反映させながら、激変緩和措置というもののあり方をもう少し調整することはあるのか

 まだ、何かアイデアが出てきているわけではありませんけれども、世の中の実態というものをより多く知るということはいつも大事だろうと思うので、今それをやっているところです。

【インタビュー】塩崎恭久・厚労相に聞く(全文3完)へ続く