塩崎厚労相「屋内禁煙の伝統を日本が破るのか」五輪見据え受動喫煙対策訴え

2017.07.05 11:10 The PAGE https://thepage.jp/detail/20170703-00000009-wordleaf 

 

 通常国会で法案提出が見送られた受動喫煙対策。厳格に屋内原則禁煙を打ち出す厚生労働省と、一定面積以下の飲食店は禁煙の規制対象外としたい自民党の交渉が決裂したためだ。塩崎恭久厚生労働相は、THE PAGEのインタビューに対し、「北京五輪以降、ずっと屋内禁煙でやってきた伝統を日本が初めて破っていいのか」と疑問を呈し、「お店自体を原則喫煙禁止ということでいかないと、我々としては合意できない」などと述べた。

 都議選で受動喫煙対策が議論に上がったことについては「議論が国政に影響することは一定程度あるんだろうと思う」と話し、注目が集まることを歓迎した。自民都連が国政とは別に、原則屋内禁煙の条例制定を掲げて戦ったことについては「そういう声が党内に広がることは大事」などと肯定的に受け止めていた。 

厚労省案と自民党案の違い

 厚生労働省は3月、受動喫煙防止対策の強化について基本的な考え方を示した。屋内は原則全面禁煙とし、30平方メートル以下のバーとスナック等を規制対象外とする内容だった。

 これに対し、自民党は5月、「バー」「ラーメン屋」など業態による分類はせず、客室面積は100平方メートル以下、厨房は50平方メートル以下の計150平方メートル以下の飲食店については「喫煙店」であることの表示義務や未成年の立ち入りを禁止とすることで、規制の対象外とする案を打ち出した。

 塩崎厚労相は、厚生労働省案の例外規定については、「従業員なしで、お1人で、カウンターでバーを経営されているぐらいの広さのところだったらば、そもそも飲みに行くわけですから、妊娠されている方も多分行かないだろうし、子供は行かないだろうし、従業員がいなければ未成年もいないだろうということで例外にした」と説明。

 一方で、自民党案については「東京の場合、85.7%の飲食店が喫煙可になる。外に喫煙店という表示をすればいいじゃないかといっていますが、送別会でみんなで行きましょうといったところが吸えるところだったら、自分の意に反していかざるを得ない。こういうときには、受動喫煙は排除し切れない」と話した。

受動喫煙対策は感染症対策と同じ「科学に基づいてやる必要がある」

 塩崎厚労相が厳格な対策を求めるのは、受動喫煙による健康被害が明白とのデータがあるからだ。

 国立がん研究センターの発表によると、受動喫煙を受けなければ亡くならずに済んだ人は国内で少なくとも年間約1万5000人に上るという。厚生労働科学研究班の推計によれば、受動喫煙による超過医療費は年3000億円以上とされる。

 そして、国民健康・栄養調査によれば、非喫煙者が受動喫煙被害に遭遇する機会として一番多いのが「飲食店」なのだという。世界保健機関(WHO)によると間仕切りなどによる分煙では、受動喫煙被害の防止効果が乏しいことも明らかになっているという。

 こういった状況を受け、2010年にはWHOと国際オリンピック委員会は「たばこのないオリンピック」の推進で合意。それ以降、すべてのオリンピック開催地と今後の開催予定地は原則屋内禁煙となり、リオ、ロンドン、ソチ五輪などでも罰則を伴う法規制を行ってきた。合意前の、北京・バンクーバー五輪でも屋内禁煙は実施されている。

 塩崎厚労相は「感染症対策で人の命を守らなきゃいけないというときには、やっぱり科学できちっとした感染症防護策を導入しますよね。それと同じことだと思います。(厚生労働省案に反対の人は)オリンピックをどうやって迎えるんですかということについての代案をぜひお示しをいただきたい。海外の方は多分ホテル等飲食店、それも飲み屋さんじゃなくて普通のところで日本の食を楽しみたいという人たちが多いと思うのです。ここをどうするか。(屋内禁煙でないという点が)やはり(日本の)評価を決めてしまうと思うので、そこのところもじっくり議論をさせていただけたらなと思います」と語った。

都議選の影響について

 都議選では、各党が「受動喫煙対策」を争点の一つとして戦い、「子どものいる家庭内での禁煙まで目指す」ことを掲げた地域政党・都民ファーストの会が圧勝する結果となった。

 都議選で受動喫煙策が議論に上がったことついて、「大いに議論していただきたいと思う。(議論することで)気がつかなかったことにも気がつくように(なる)。私だって、随分学びましたから。東京オリンピックというぐらいですから、都議選で、各党いろいろな表現ぶりで受動喫煙対策を標榜されていますけれども、当然そこでの議論が国政に影響することは一定程度あると思います。一つの世論調査に代わる本当の声にもなるのでしょう。何を考えて1票を入れたかというのは、いろいろ人によって異なるのでありますが、選挙キャンペーン中の議論とか、争点になっていることなどを考えてみれば、やはり何らかの影響はあるんだろうと思いますね」と語った。

(インタビューは6月28日に実施)

【塩崎恭久(しおざき・やすひさ)】
1950年11月7日生まれ。愛媛県出身。1975年3月東京大学教養学部卒業。同年4月日本銀行入行。1982年6月ハーバード大学行政学大学院修了。1993年7月衆議院議員当選(旧愛媛1区)。1995年7月参議院議員当選(愛媛選挙区)。2000年6月衆議院議員当選(愛媛1区、当選6回)。内閣官房長官・拉致問題担当大臣、外務副大臣など歴任。2014年9月から現職。

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