2018年1月15日 東京新聞夕刊 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201801/CK2018011502000227.html
たばこが原因で二〇一四年度に百万人以上が、がんや脳卒中、心筋梗塞などの病気になり、受動喫煙を合わせて一兆四千九百億円の医療費が必要になったとの推計を、厚生労働省研究班が十五日までにまとめた。国民医療費の3・7%を占めるという。
〇五年度の推計と比べると、喫煙率の減少に伴い一千億円余り減少した。ただ受動喫煙に関しては、因果関係が判明した心筋梗塞や脳卒中の患者を新たに対象に加えた結果、医療費が倍以上の三千億円超に膨らんだ。
研究班の五十嵐中(いがらしあたる)・東京大特任准教授は「脳卒中などの循環器系の病気は、たばこの対策を取れば比較的早い効果が期待できる。受動喫煙の防止策を早く進めるべきだ」としている。
研究班は、たばことの因果関係が「十分にある」ことが分かっている、がん、脳卒中、心筋梗塞などの病気に着目。これらの病気の治療に使われた四十歳以上の人の医療費や、たばこによる病気のなりやすさに関するデータを基に試算した。
その結果、喫煙で一兆一千七百億円、受動喫煙で三千二百億円の医療費が発生したとみられることが判明。患者数は喫煙が七十九万人、受動喫煙が二十四万人だった。
喫煙者では、がんの医療費が多く、七千億円を超えた。心筋梗塞をはじめとする虚血性心疾患や脳卒中などの脳血管疾患の医療費も、それぞれ二千億円だった。
受動喫煙では、がんによる医療費が三百億円。虚血性心疾患は一千億円、脳血管疾患は千九百億円と推計した。
経済的な損失額も試算。病気による入院で仕事ができなくなったことによる損失は喫煙と受動喫煙を合わせて二千五百億円、勤務中に喫煙するために席を離れることによる損失は五千五百億円と見積もった。
<たばこと健康リスク> 喫煙者が吸うたばこの煙には約70種類の発がん性物質があるとされ、受動喫煙で周囲の人が吸い込む副流煙にも発がん性物質やニコチンなどの有害物質が数多く含まれている。厚生労働省のたばこ白書によると、喫煙者がなりやすい病気には、肺がんや胃がんなど多くのがんや、運動時の呼吸困難を引き起こす慢性閉塞(へいそく)性肺疾患、脳卒中があり、妊娠中では低出生体重児の原因になる。受動喫煙では脳卒中や肺がん、心筋梗塞になりやすくなるほか、乳幼児突然死症候群の危険が高くなる。